「光、光ー!」


『ん、何ー?』


「何か光に用があるってイケメンが来てるよー」


『ぇ?誰?』


「名前は実渕さんだって」


聞いたことのある名前に首を少しかしげて一先ず来た理由を聞こうと彼に会いに行った。校門の前に待たれては目立ってしまう彼の容姿はイケメン、と形容するのではなく綺麗と形容した方がいいだろう。


「こんにちは」


『……こんにちは?』


「アラ?かーわい!」


突然ギュウギュウと抱き締められても……。


『あ、あああの!』


「はぁい?」


そんなに可愛く言われても負けないんですからね!


『離してください……実渕さん』


「えー」


『えー、じゃありません。要件をどうぞ。私はこれから部活ですから』


仕方無しに、とでも言いたそうな顔をして私から離れる実渕さん。間近で見るその顔は女の敵!と言われそうな顔をしていた。


「あ、自己紹介してないわよね?アタシは実渕玲央よ。よろしく」


『あ、白銀光です。宜しくです』


クスリと笑われてしまった。彼はそのまま私の手を握って握手のように手を上下に動かしたのだ。
ゴツゴツした、大きな手。
それは彼の手のようだった。


「今日はね、あなたに教えて欲しくて来たのよ」


京都国際音響高等女学院。そこに通っている三年生。いつの間にか、征と『離れ』て三年経っていた。


「征ちゃん、ついに根を上げたの」


『え?』


「光が元気かだけでも見て行って欲しいって言われたのよ。会いたいってよく言うわ」


『……へぇ、そんなこと言うんですね、あの人は……。
で、実渕さんは何をそんなに聞きたそうにしてるんですか?』


「アラ、バレちゃった?」


舌を出して照れ隠しのように頭を掻く彼はまるで獲物を品定めするようなそんな、冷たい目だった。顔は笑っているのに目が笑えていないのだ。


『話すことはありません。どうか、お引き取り願います』


「ダーメ。聞かせてくれなきゃ」


―あなたと征ちゃんの過去。何があったのかを


『!!』


腕を掴まれてその顔で言われればもう、嫌とは言えない。


『っ……』


「アタシここに来る途中にいいお店見つけたの。今からデートがてら行かない?」


『っ……はい』


「きゃー、待ってるわ!」


私はこの後部活に戻って大会前だから歌おうと思っていた。でも、いつの間にか彼を恐れてしまった。怖い、とそう思ってしまったから。だから断れるわけなくて、了承してカバンを取りに一度教室に戻った。




「光ー!彼氏いるなら言ってよねっ」


ここは女学院と言うだけあって女子校だ。
そのため皆恋愛話には直ぐに食らいつく。
彼氏がいるいないはこの学校では一種のステータスに過ぎなかった。お嬢さま学校はやはり美人や外人が多い。その分男を引っ掛けるのがうまい。


『彼氏じゃないよ』


私はもうきっとこれから先彼氏を作ることも、結婚することもきっとない。
だから、そういう話には結構入ることは少なかったりする。


「え、じゃあ何?ナンパ〜?」


『ふふ、違うよ。お世話になった人≠フ友達。ああ、行かなきゃ。ごめんね?じゃあ』


お世話になった人、それは言わずもがな征のこと。でももう、一緒にいることはない。会うことも、話すことも。


一生


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