エントリーナンバーが呼ばれて心臓バクバクのまま舞台に立って指揮の志輝ちゃん見てたら落ち着いて。
指揮の志輝ちゃんは名前から指揮になったという笑い話があってみんなで笑いあった。
歌って歌って、疲れるくらい息が切れるくらい声出し切って、でも楽しくて笑顔が溢れた。
やり終えた私達の笑顔はきっとスッキリしていたはずだ。作り笑いとかではなく本当に、心の底からの笑顔。
『ありがとうございました!』
私達三年生はこのコンクールが最後。どれだけ結果を悔やんでも最後は最後。だから、皆力を出し切っていたと私は思ってる。
一年生と二年生は何かもうぐちゃぐちゃ。涙で顔がぐちゃぐちゃなのだ。
あろうことか好きな先輩に抱きついている。
これは女子だけの特権。
「せんぱっ、い!」
『はいはい。何ですか?』
私は日の下に出れない。それは私がアルビノだから。
小さい頃も外で遊ぶときは苦労した。長袖を着て長ズボンを履いて、専用の日焼け度目を塗って。それでも、辛くても征と遊びたくて我慢したものだ。
でもそれも終わり。もう私は子供じゃない。限度がわかる。
だからみんなみたいに日の下にいるわけじゃないから誰かが集まってくるなんて思ってなかったのに。
『ほらほら、泣かないの』
「私、先輩のこと……忘れましぇん!」
『うん。ありがとう』
こうやってきてくれることがとっても嬉し言ってことを知った。
「姫先輩ィィィィイイ!!!!」
『ぅおっふ』
「行かないでぐだざぃいいいい!」
『うわー……』
「うわーッて何れすか」
もう舌足らずの子供みたいになってるから。部長なのに。
『ほら、部長。みんなまとめて?』
「部長ゥゥウ」
『私は元、だからね。現部長はあなたよ、怜奈ちゃん』
「ぅう……」
『泣くな泣くな。よしよし』
ぎゅう、と抱き着いてきた彼女の頭を撫でてやればああ、また私の変な噂がたつなぁ。
まぁ、仕方が無い。私にとったら可愛い後輩だもの。
「怜奈ちゃん。女の涙は大事にとっときなさい」
「澪先輩……」
『澪ちゃん……それよりみんなのこといいの?』
「部長がいれる場所のがいいやろ?日の光の下より日陰のが涼しいやんか〜」
澪ちゃんは本当にさり気ない気遣いが出来る優しい子。
見た目はそうでもないけれど実はそうなのだ。
「まったく……ぶちょー、頑張りや!あ、せや、姫」
『ん?』
「来年からOGも他校生も学校入るのよくなるらしいで」
『え……』
「だから、あんたらにも会いに行けるわ!待ってて、行ったげるから」
「はい!」
どうして、いきなり?
ずっとずっと長年開けれなかった門なのに。変な学校だった。
文化祭も体育祭も、両親しか入れなかったそこ。
『来年のいつから?』
「ん?ああ、1月から。もうすぐやで」
1月……。 まだ先だ。ならいっか。
深く考えなくてもいいだろう。
『じゃあ会いに行くよ。まってて』
「じゃ、明日は部長のソロデビューだ!」
いや、大げさな……。
「そうですね!見に行きますよ!先輩!!」
『ありがとう』
でも、私は貴方達の期待を裏切る。
私は伝えたいことを伝えるよ。
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