散々泣きじゃくって、声枯らして、いつしか私は疲れて眠っていたらしい。
窓から見えた景色は真っ暗だった。


「失礼します」


控えめなノック音。入るのを拒んだ私は要件だけ聞いた。晩御飯の時間だ、そう言われれば食欲がない、そう伝えた。作ってくれた方に申し訳ない。そんなことを思っておきながら私は何も言わないのだ。許して欲しい。


『あの、誰もこの部屋に入らないように言ってもらえませんか?』


「誰も?征十郎様もでしょうか?」


『はい』


そんなこと言ったって彼は入ってこないのだろう。
来てくれた人は少し渋ったが仕方なしげに頷いてくれた。
私はそれから引越や住む場所を決め部屋についていた風呂に入り床についた。


****


当然ながら征は朝、私の部屋に来ることはなかった。安心した反面悲しかった。
本当に私は嫌われてしまったのだと。安心したのは征じゃなく赤司くんに会わなかったからだ。できるならば彼とはもう会いたくない。
でもそうすると征とも会えないことになる。それは嫌だった。


『……結局、準備終わったから引越しは本当に明日だ』


事前にもらっていた退学届けを書き、制服に袖を通した。
教科書などは一切入れずに財布と携帯、定期などしか入っていないカバンを掴み家を出た。

この家とはもうおさらばなのだと思うとさみしい。七年間ずっと住んできた家を離れるのは離れ難い。
家にありがとうという思いを込めて頭を下げ私は今日、中学を辞めた。

そして次の日、私がいた部屋にはもう何もなくなっていた。服も家具も、なくなったそこはどうも虚しかった。

ちなみに今も旦那様とは連絡を取り合っている。数ヶ月に一度手紙が来る。中身はだいたい一緒。だけれど、征のチームメイトだろう。一緒に写っている写真も送られてきたり、名前が書いてあったりした。


『……私は……彼からの命令には逆らえないの』


私の受けた命は二つ。
赤司征十郎に関わらないこと、現れないことだ。


****


「手短に話すと……僕は光をぶってキレた。あの子を殴ってはいけなかったのに、認めて欲しくて、でも認めてくれなかった彼女にいらついて……二度と僕の前に現れるな、そう言ったよ」


そしたら君はいつしか居なくなっていたね。必死で探したよ。
アルビノは珍しいからすぐに見つかった。


「会いたいよ、今すぐにでも抱きしめたいくらいだ」


「……はい、約束のチケット。お願い、彼女に嫌なことはしないで。会いたくないと言われたら身を引いて頂戴。まだ早いかもしれないもの」


「なぜだ?」


「勘よ、カ・ンッ」


「……やっと会える」


自然と口角が上がった。


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