「どうしたのだよ」


数日たってから動いた私は馬鹿だ。この話を聞いてから動いたのは、馬鹿だ。


『……何で?』


「?」


『征が、何したの?緑間くん、紫原くん、青峰くん、黄瀬くん、黒子くん……どうして?』


「何言ってんだよ。さっさと用件言えよ。寝みぃ」


征以外の、一軍の人に集まってもらったのは聞きたかったから。征のことを聞きたくて、言いたくて。


「で、何〜?」


『征に何を求めたの?』


学業に支障が出るようでは本末転倒だ


『何を言ったの?』


だが学業に専念しなければ首位もとれないような奴も話にならん


『……何でなの?』


部活動はやるべきだ。文武両道…いやあらゆる面で秀でていてこそ赤司家の人間だ


『認めてあげなかったの?』


「白銀さん……?」


『っ、返して』


「何をっスか?」


涙なんて見せるのが嫌で俯いて拭う。
でも声が震える。


『征を、返して……』


「どう言う意味だよ。あいつならいるだろ、お前の隣によ」


『違う、あの人は征じゃない……』


君たちも旦那様のように征を認めてはくれなかった?
どうして私は気づいてあげられなかったのさ。ずっとそばにいて話していたのに。
でも一番最低なのは私。
旦那様の話を聞いてから動いた私だ。


『返してよ……ねぇ、返して』


「何を言っているのだよ?」


『ずっとそばにいて信じて、認めてくれていたら良かったのに』


話が矛盾してるのはわかってる。
どうして私は気づいてあげられなかったの?私の知らない彼になってしまった。


「なんか俺らが悪いみたいになってない?悪くないし」


『でもっ』


「ねぇ、それは光ちんも同じでしょ?どうして気づかなかったの?赤ちんはあんたに気づいて欲しかったんじゃないの?サインとかなかったわけ?」


『っ……』


「む、紫原っち……キツくないスか?言い方……」


すごい形相の紫原くんを黄瀬くんが止めるけどそんなのどうでもいいって感じ。
止めようとしてくれた黄瀬くんを無視して口を開く。


「光ちんにそっくりそのまま返せるよ、赤ちん返せって。だってあんたも同じだし。最近赤ちん避けたりしたでしょ?それに俺は赤ちんに勝てると思って試合申し込んだだけ。別に悪いことしてないよね?」


面倒くさそうに話す彼の目は私を震わせるのに十分だった。
素直にこの人が怖いとそう思った。何も言えない自分が悔しい。


「そうだよ。俺だってあいつに言われたしな。試合に来るならそれでいいって」


『そんなっ……』


「練習したら余計つまらなくなる」


『……』


私が好きだった彼らはどこに行ってしまったんだろうか?あんなに楽しそうにバスケをしていた彼らは。
あんなにも輝いていたのに、どうして死んだ目をしているの?


「俺が従ってるのは赤ちんだから」


意味のわからない言葉を残して紫原くんは大あくびをして居なくなった。


ダメだ、わかってるのにわかってるのに!


『貴方達のせいだ!征は……征を返してぇ!返してよ!返し、て……』


八つ当たりだってわかってる。彼らに言ってはいけないことだし、私が言うことじゃないってことも首を突っ込むべきじゃないってこともわかってるの。でも、でもね、私の大切な人を返して欲しいんだ、ただそれだけだから。


『私と同罪だ!人殺し!征を私達は殺した!!!』


だからお願します。征を返してください。
あの時の私はどれだけ望んでいたのだろう?馬鹿みたいにそんなことを望んでいた。


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