『ねぇー、征くーん?おおーい?』
顔の前で手を振っても気をひこうと思ってこそばさせてみたり、でも全部意味はなくて目を瞑って縁側で瞑想中。
『もぅ、遊ぼー?』
同い年なのに、どうしてこんなにも違うのだろうか?
早、拾われて一年。私はここでたくさんのことを学んだ。勉強のためにガッコウにも行っている。
私の髪の毛をバカにするから嫌い。征は綺麗って言ってくれるのに。
『はぁ……つまんなっわ!?』
「フフッ、もっと女の子らしい声を出したらどう?光」
『まだ今日のは女の子らしい!』
立ち上がろうとした時に腕を引かれて体制を崩す。征に抱きしめられるような形に落ち着いた。
「クスクスッ、全く……遊んで欲しいの?」
『そうだよ。ねぇ、将棋しよ!チェスでもいいよ?』
「負けるのに?」
『今日は負けないもんッ』
盤ゲームはいつも負けるから、悔しい。
征は手加減って言う言葉を知らないらしい。だっていっつも試行錯誤して考え出したものを全部消してしまうから。
「じゃあ、将棋しようか?」
『うん!』
私(僕)は彼(彼女)のこの笑顔が好きだったのに。
****
「玲央」
「久し振り、でもないか。こんにちは」
「ああ。会ったのは……一週間ほど前か?」
「そうね、
征ちゃん」
「全く……その呼び方はやめてくれと何度言えばわかるんだ?」
呆れたように僕は笑う。
ねぇ、玲央。僕はお前が羨ましいよ。どうしてあの子に、光にお前は簡単に会えるの?話せるの?触れれるの?
「征ちゃん?」
「ん?何だ?」
「光ちゃんは嫌がるかもしれない」
どうして、そんなにもお前は光と近いんだ?
僕のすぐそばにいてくれたあの娘を、誰か返してくれ。
「それでも、行く?」
玲央の手には何かのチケット。
手渡されたそれを見るとどうやら歌のコンクールの入場券のようだった。
何故、これが光の嫌がる要素になるんだ?
「これね、光ちゃんの学校が出るの。勿論、彼女は個人の部に出るわ」
「!」
「ねぇ、征ちゃん」
欲しい?
当たり前だろう、そんなこと聞くな。
「条件付き。
ねぇ、どうして光ちゃんは征ちゃんを避けるの?」
「それが条件か?話せ、と?玲央、君はどこまで首を突っ込むつもりだ?」
「全部よ。気になっちゃったんだもん」
僕は昔話より光に会いたいから。だから話すよ、玲央。
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