ガタガタ……どこか取り付けが悪いのかバスは道を走る度にその音を私たちの耳に届けた。


「なんか、不気味な音ね」


社内にいるのは私たち二人だけで余計にその不気味な音が聞こえた。


『本当に。静かな分よくわかります』


「ええ。嫌になるわね」


ちょうどバスが来てくれ、乗れた私たちはいまバスに揺られてる。
この揺れが疲れた体には眠気を誘う揺れなのだ。どうしてもコクリコクリとなってしまうその素直な体はいうことを聞いてくれない。


「ふふ、眠いのかしら……?」


『少し……』


力なく笑う私は本当に眠たそうだったんだと思う。


「どこで降りるの?そこまで寝てるといいわ。起こしてあげる」


『ありがとうございます……場所は――』


そこから意識はない。ぐっすり寝ていたみたい。イビキかいてなかったかな、とかとっても不安。



とりあえず起きた時に実渕さんの肩を借りていたことを謝った。




「光ちゃん?光ちゃん!着いたわよ」


『っえ?あ……ああ、あ!』


未だに覚醒していない頭を働かせどういう現状か理解したのはついさっき。
PiTaPaを使ってバスを降りるといつも目に入ったのはいつもの景色。


「寝顔、可愛かったわ」


『え!?見てたんですか!?!?』


「ええ、バッチリ。なんなら写真みる?」


なんて抜かりないのだろうか。

見してもらったその写真はなんとニコニコ実渕さんが笑うなか私がぐっすり寝ている写真。恥ずかしい……。


『け、消しましょうっ、即刻!!』


「あら、ダメよ。これは私の友達にモデル候補って見せるんだから!」


『え"!?もうそれ、余計にダメですっ』


背の高い実渕さんは携帯を上にあげてしまって私には手を伸ばしても届かない位置にされてしまった。仕方ない、諦めよう。


それからモデルの話で思い出した。


『実渕さん、良かったら友達と来てください。人数決まったら連絡ください』


「これは……」


実渕さんに渡したのは私の部のコーラス部のチラシ。
今度大会に出るから見に来て欲しいな。
チケットは先生に言ったら用意してくれるから代金などは気にしなくとも平気だったりする。流石、マンモス校お嬢さま学校。


「いいの?」


『はい!もうすぐなのでお友達も一緒に来て私のこと本当にモデルに相応しいか判断してもらってください。私は個人の方にも出るので』


ああ、眠たい。
家に帰ってシャワー浴びて、寝よう。


「……ありがとう。頑張ってね」


『お話はまた、その時にでも。では』


そう言って家の中に入るとため息ひとつついてドア伝いに座り込む。
そのまま涙を流す。


実渕さんに会って会いたいと願ってしまった。


『会いたいよっ……征……』


あなたに、会いたい。
今すぐにでもいい、声だけでもいい。聞かせて、見せて。
触れて、触りたい。


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