飽きたんだろう、それから数十分後、解放された私達はもうボロボロだった。
それでもさつきちゃんは部活に行った。私はさつきちゃんに謝って帰らせてもらった。
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「……桃井、何があった」
「……」
ずっとダンマリを決め込んだようにさつきちゃんは話さなかったそうだ。
「桃井、怒りはしない。話してはくれないか」
これはさつきちゃんに聞いた話だから明確にはわからないけれど話しておこうかな。
「……せいだよ……」
「?」
「赤司くんのせいだよ!」
さつきちゃんはそう言ってしまったことを死ぬほど後悔したそうだ。後日私にこの話をしてから謝っていた。
「どういうことだ?」
征はずっと心配してくれていた。
最近私があまり征に近づかなくなったからだろうか。
「っ何でも、ない」
「桃井さん、話せば楽になることだってあります」
「……大丈夫。光ちゃんは急ぎの用があって帰っただけだから」
それでもさつきちゃんの体にはガタがきてたんだろう。
数歩歩いたところで気絶したと聞く。青峰くんがかなり取り乱して保健室に運んだそうだ。それはそれは大層なくらいに注目を浴びただろう。
それでもすぐに保健室で目を覚ました彼女は先生に言ったんだ。
「ダイエットし過ぎたかも……」
蒼白な顔をして、ニコリと笑う彼女はどれほどか弱くて儚く見えたのだろう。それは私は見ていないからわからないが決して体を見せようとはしなかったし動いても何されてもうめき声を上げなかったさつきちゃん。
「……さつき、なんだよ。ダイエットだぁ?そんなんすんじゃねぇよ、バーカ」
「!何よ、女の子は気にするのよ!」
「こないだケーキ食い過ぎたんだろうが」
「うっ、それは……」
やはり青峰くんは鈍感だなって改めて理解させられた瞬間だった。
それは黄瀬くんと紫原くんもだった。いや、紫原くんは気付いていたのかもしれない。でも彼、面倒くさがり屋だから。
でも問題は征と黒子くん、緑間くんだった。
そんなことが部活であった中、私はただ部屋にこもって泣いていた。
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「……光さん、何かありましたか?」
征が忙しい時は私といてくれた理恵さんが扉をノックしながらそう静かにいう。
でも私はそれどころじゃなくて泣きじゃくっていた。
「もし、聞こえていますか?」
私の名前を繰り返して心配そうにする理恵さんは私の少し年の離れた姉のような存在だった。優しくて頼りになる彼女はずっと私のことを気にかけてくださった人だ。
「光さん、篭っていたら変わるものも変わりませんよ。出てきてくださいな」
『嫌、ですっ』
しゃっくりをあげながらそう答えると焦りが声に現れたのだろう。少し上擦った声が扉越しに聞こえた。扉に私が凭れていたため開こうとはしない扉。
「泣いてらっしゃるのですか?」
この日の彼女はすこししつこかった。
仕方無しに扉を開けると悲鳴に近い声をあげて私の髪を触る。
何事かと数人人が来ると同じような状況に陥った。
『っあの、征には、言わないでください……』
「……ですが」
『お願いです』
泣きながら、でもはっきりそう言うと頷いてくれたので安心する。それからお風呂場に連れられ髪の毛を整えられた。やはりお腹より下だがそれでもかなり短くなってしまったそれを私は恐る恐る触れた。
『明日から、どうしよう……』
征より先に起きて学校に行こうか。
でも其れだとあからさま過ぎる。
行き着いた結果は自ら頑張って髪の毛をくくることだった。
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