「へ〜」


彼は私服、私は制服。
しかもここらでいう結構名門な学校のお嬢様である。
だから歩いていれば結構目立つ。


「あ、征ちゃんが髪の毛はどうしてるのって?それも自分でやったのかしら?」


『これは友達が日々遊んでくくってくれてます』


「あら、そうなの」


『はい』


「綺麗ね……」


実渕さんの長い指が私の髪の毛をすり抜けていく。
綺麗、そう言われるのはもうなれてしまった。でも、一番言って欲しい人はもういない。


「あ、そうそうそれとね光ちゃん」


『はい』


「……今でも征ちゃんのこと違う人だと思う?」


『!』


征はどこまで実渕さんに話しているんだろう?大学一回生の実渕さんは優しい部類の中のきっとお節介の部類にはいるだろう。
じゃなきゃ此処まで無関係の人間に話しかけてくることはないから。


『さぁ?会っていないので、なんとも……言えませんね』


「勘よ、勘」


星が飛んできそうなくらいのウィンクを飛ばされて言葉に詰まる。
正直どうなんだろうか?わかるわけが無い。もう、三年も会ってないのだから。


『……変わってないんじゃ、ないですか?でも、私は……心から変わっていて欲しいと願っています』


そう、もう私と一緒にいてくれた赤司征十郎はいない。今いるのは征じゃない、赤司くんだ。


「そう……もし変わっていたらあなたは会う気、ある?」


『ありません』


即答したのは仕方ない。彼と約束したから。
だから、私はそれを破ろうとは思わないし例え実渕さんが無理やり征を連れてきたとしても私は逃げようとするだろう。


「そっか。でも何で?そこまでして拒絶しなくても……」


『彼が私にそう命令したからです』


「めい、れい……」


『ええ。それに、先に拒絶してしまったのは私です。会わせる顔もありません』


「そうなの……」


『ええ。ちなみにまだですか?』


「あ、もう着くわ」


ねぇ、実渕さん。私は何をあなたに話せばいいんですか?中学自体の話ならば長すぎて今日一日では語りきれませんよ?


それに、征から聞いていないんですか?
私は話してしまえばまたあの時のように泣いてしまう気がするんです。だから、聞かないで欲しいのに。
人が一線を引いているのにそこに土足で踏み込まないで。

お願い、実渕さん……


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