ひしひしと肌を刺す夜に溶け込むように笑う黒子の顔を、青峰は忘れられないでいる。



寒い寒い冬のはずなのに、黒子は珍しくしゃくしゃくとアイスを溶かしていて、珍しいこともあるもんだと青峰は思った。黒子曰く「冬に食べるアイスは格別です」とのことだったので、横からすこしだけかじって咀嚼する。ふうん、これが冬限定の味か。一気に口の中が冷たい。

黒子と青峰が出会ってもうすぐ1年が経とうとしている。なにかにつけてお互いに「気が合わない」と口を揃えたが、青峰だけでなく黒子もそれが心地悪いわけではなかった。その証拠に、ふたりがこうして一緒にいることさえ、さも当たり前のようになっている。桃井に「バスケをする時だけは怖いくらい合うのに」と笑われたのはいつだったか、青峰はもう覚えていなかった。むしろ、一緒にいることで、お互いのキャパシティが広がっていくようにさえ感じる。

「まじでさみーな、指の感覚ないわ」
「青峰くんもそろそろ、マフラーとか手袋してきたらいいと思います」
「つーかテツさぁ、その前にお前が手袋しろよ」
「僕は、なんか手がむすむずして気持ち悪いのでいやです」
「なんだそれ、っうわあああ!触んなばか!つめてえ!」

青峰にそう言う黒子は、マフラーこそしているものの手袋はしていない。その手の冷たさに、いつも当然のように青峰は慣れなかった。今だって首筋にするりと手を入れられて、ひやりというよりぴりっとしたような冷たさに襲われたのだった。思わず叫んでしまえば、黒子はいたずらにくすくすと笑っている。気持ち悪いから手袋はしないなんて、黒子のちょっとしたこだわりのようなものに青峰はすぐに、はいそうですかとは言えない。そういうところが、自分たちの考えの相違だろうということは十分に分かりきっていた。

「あー…バスケしてえなぁ」
「さっきまでやってたじゃないですか。まったく、本当にバスケが好きですね」
「あ?それならテツもだろ。なあ、ちょっと公園寄っていかね?」
「いいですよ。僕は青峰くんとバスケできるのが嬉しいので」
「なんだそれ。つーかテツいねえとかもう考えらんねーから。わかってんだろ?」
「…そうですね」

白い息と同じように黒子がほわりと笑うので、青峰はなんだか変な気持ちになった。必要としているのは、こうして一緒にいるのと同じように当たり前なのに、と思う。これからもずっとこうして、黒子は隣にいるのだと。

「ありがとうごさいます、青峰君」

たしかにあの時、何の迷いもなく青峰はそう思っていた。ある寒い日の、夜のことだ。

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