※すこしハレンチ風味




男なんてエッチ、って笑えばすぐに馬鹿言うな、とか言いながらキスしてくるしそのまま押し倒してくるからすぐベッドに雪崩れ込む。お前が馬鹿だろーがって思いながらまったく興奮しない自分の声でちょっと良いようにアンアン言って喘いであげれば、あとは向こうが勝手にどうにでもしてくれる。俺が腰振らなくてもどうにかなるの。でもイッたことなんかない。そういうふりだけ上手くなっちゃいました、俺。

仲良くソファに並んでテレビを見ている。昼ドラから目を離さずに高尾がそう言った。俺の目なんてひとつも見ていないからその目に何が映ってるのかなんて知らなかったけれど、テレビの女を見ていないことは分かった。何十人もの男の中で、今どのクソ野郎を思い出しているのかなんて興味もないから考えるのをやめる。
テレビの女が紅い口紅をしていて吐きそうになる。汚い。

「宮地さん」
「あ?」
「俺汚いのかなー」
「…さあ、まあ汚ねぇと思えば汚ねぇんじゃねえの」
「ふーん」
「どうでも良いと思ってんな」
「わかんねえ。どうだろ」
「…この女よりは汚くないかな」
「はは、女の子に勝つってすごいっすね」
「やめれば?汚いと思ってんなら」
「今さらですよ。気持ち良かったらいいもん」
「嘘つけ」

だいたい人のこと信用しすぎるから変なバイトにはまっていくんだろとか、好きな人をが欲しいならその辺の女子に声でもかけろとか、周りの奴が高尾にかける言葉はもう言わなくなった。言い続けても直らないから諦めている。別に男が好きなわけじゃないけれど、そういう、男の役目というか、すごく簡潔に言えば女を抱くことが、高尾はとうとう出来なくなっていた。そうなれば好きでもない男を引っかけて気持ち良くしてもらって引き返せなくなることは明らかだった。
テレビの女がスーツの男にキスをしている。

「お前早く好きなやつ作れよ」
「テレビに合わせて話題振ってくるのやめてくれますか」
「男とヤッて気持ちいいの?」
「んー、普通」
「そのうち男にしか反応しなくなるんじゃねぇの」
「あは、もうそうかもしれない」
「試すか」
「えっなに、宮地さんそっちの人だったんですか」

はじめて高尾の目に俺が映ったのを確認して腰を引き寄せる。ソファがギシリと笑った。お前がそっちの人によく抱かれてんだろうが。珍しくない話だろ。ちなみに俺はそっちの人でもないし男を抱くなんてもちろんしたことない。言わないけど。

「興奮させろよ?」
「え、本気っすか」
「気持ちよくしてやる」
「やだ、宮地さんエッチ!」
「もう押し倒してるから」
「…可愛く喘いであげますね」
「アンアン言えよ、はやく」
「んぁ、っ、ちょっと、」

高尾の声がゆっくりと漏れたのを確認してキスをする。思う存分密着してやれば思った通りに心臓のあたりが揺れる。ドキドキしてんなぁ、慣れてるくせにこういうところだけいつまでも純粋らしい。

「腰、動いてるけど」
「ん、ん、待って宮地さ、」
「イッたら罰ゲームな」
「んぅ、ばか、あんた、っ」
「ふは、なあ、好きなやつ作れよ」

なあ、気づきたくなかったことを気づかされるのってどんな気持ちか教えてくれよ。俺は今、好きな子には意地悪するってやつ、直ってないなぁって思ってる。

130921

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テーマ「人外ファンタジー」
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