中学時代、多く言えば3年間一緒にいたけれど、朝まで一緒に過ごすなんて時間はそれこそ合宿の時くらいで、それはきっとたぶん振り返ったところで、お互いの人生のほんの一部の、ちいさなものだ。それなのに高校生をまたいで大学生になってから、青峰と黒子はそういう、朝まで一緒に過ごすなんてことは特別ではないくらいに一緒にいる。だけれど特に恋人になったわけでも一緒に住もうと言ったわけでもなく、ただお互いに大学が同じであって、ひとり暮らしの黒子のアパートが大学から近くて、青峰が入り浸るようになった。それだけのことだ。
それで、ずるずると端的な友人としての関係を保っているだけなので、黒子が青峰に介入して彼女がいたんだなぁと考えるのは、今までも青峰が左手につけていたはずの指輪がなくなっていた時くらいだった。

「また別れたんですか」
「あーうん。結構でかかったんだけどよ」
「はぁ。おっぱいですか」
「おま…そういうことも、口に出せるようになったんですね…」
「もう成人してますから」

なんだその理由、と白いソファに沈んでいく青峰に、それはこっちのセリフですよと返そうとすれば、くつくつと鍋が鳴り出したので黒子は何も言わずにちいさなキッチンへ戻った。だいたい今まで青峰が別れる理由なんて「めんどくさくなった」やら「重すぎる」やら、相手に聞かせられないような呆れる内容だったのでもう聞かないでおく。一度「ここに入り浸ってたら浮気と勘違いされた」なんて黒子を加害者にしてこられた時はさすがに一週間出入り禁止にしたけれど、それでも青峰は懲りなかったので、基本青峰のやることに口出しはしないことにした。

「なー今日なに、メシ」
「今日はハンバーグです」
「やーった、早く」
「子どもですか。君も手伝ってください」
「あー…テツが女ならよかったのに」
「きっと簡単に捨てられますよ」
「…テツさん、言い方」
「本当のことでしょう」
「ちげぇよ、ばーか」
「ばかなのはそっちですから」
「…なぐさめてくんねーの?」

腰に回された腕にどろりと重たいような左手の指輪は無くて、いつかの青峰よりは、ずっとずっと軽いなぁと黒子は思った。憎たらしいほど上からの低い声に黒子が弱いということは知らないはずなのに、そうしてなぐさめてくれなんて、めったにない言葉にぐずぐずにほだされそうになって黒子は苦笑した。溺れるのも悪くないかもしれないなんて、どうかしている。

130223

青峰が入り浸っている理由
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