※世話焼き峰シリーズ


簡単に言うと、さっき一年生が投げたボールが、たまたま近くにいた僕に当たってしまって数週間前に擦りむいたかさぶたが再び剥がれてしまって。謝りに来た一年生にとりあえず手当てをされた後、すこししてから赤司君に「テツヤ、その包帯は」と聞かれたので素直に「ボールがたまたま当たってしまって」って言ったんです。そしたら赤司君が一年生を呼び出しちゃって。僕は本当に大丈夫ですって言ったのに、まさかこんなことで怒るなんて思いませんでした。なんだか一年生がかわいそうなので、青峰君どうにかしてくれませんか。

たまたま少し遅れて入った体育館で、包帯を巻いて座り込んでいる黒子にそう言われたので青峰は、すこし遠くにいる、いつも冷静な赤司の後ろ姿を見つめてため息をついた。「んで、テツは大丈夫なのか」と聞けば「はい、僕は普通に歩けるし練習もできると思います」と返ってきたので、もう一度、今度は安堵のため息が漏れる。「今日の赤司君はどうしたんでしょうか」なんて言う黒子の頭をくしゃりと撫でて、黒子の望み通り赤司へと足を向けた。まったく黒子に至っては相変わらず鈍い。赤司がああなるなんて。どれだけ大切に思われているんだろうなぁと思う。


「赤司ぃ、わりぃ今来た」
「…ああ、なんだ大輝か」
「あ?なんだってなんだよ。つか、何やってんの」
「それは…まあいいよ。大輝ははやく着替えておいで」
「ん。ま、わかるけどほどほどにしてやれよ。一年びびって漏らしても知らねーぞ」
「…知っているなら、わざわざこっちに来る必要なかったんじゃないのか?」
「ああ、テツに聞いたよ。あいつお前がなんかあったんじゃねーかって心配してたぞ」
「どういう意味だい、」
「そういう意味だよ。ほら、もういいだろ。わざとじゃなかったんだしよ。反省してんじゃねーか」
「…しばらくしたら、練習を始めるよ」

そう言う赤司の顔がすこし困った顔になって、ため息をついたので青峰は安心した。それは、たぶんこうして介入する青峰に呆れてのものだったが、紛れもなくいつもの赤司だったからだ。後は頼んだからね、と言い残して部室に戻るのを見計らって、未だに緊張したまま張りつめた一年生を見れば、やはり泣きそうになっていたのですこしおかしくなった。

「あー…まぁ大丈夫だって。赤司あんま怒んねぇからびっくりしただろうけど」
「、あの、本当にすいませんでした…」
「いーよ。わざとじゃなかったんだろ。テツも大丈夫みてえだし、俺だってこんなんだから、しょっちゅー怒られるぜ?テツにも赤司にも。ま、わかると思うけど」
「ぅあ…はい、すいません、」
「もー謝んなって。あー、いいこと教えてやろうか?」
「えっ」
「ふ 、赤司本当は怒るの嫌いなんだよ。柄じゃねーってわかってんの。けどよー、キャプテンだろ?仲間がケガしたとき、何も言わずにほっとけねーじゃん?」
「はい、」
「だから許してやってくれな。怒らねーとだめなの。もしお前がテツと同じように怪我してても、そしたら赤司は同じだれかを怒らないとだめなんだよ。本当はあいつ、俺らのこと大事に思ってくれてんだぜ?」

わかりにくいけどな、と笑えば黒子がこそりと近づいて来たので、そろそろ着替えようと青峰はそこを動いた。黒子と共に部室へと歩きながら、怒るのって大変だよなぁと他人事のように思う。けれどきっと伝わったはずだ、赤司は誰よりも。

「なーテツ、聞こえてたか?」
「はいすこしだけ。ありがとうございます、青峰君」
「俺は別に。ま、こういうとき大変だよなぁ。赤司はキャプテンだってことだわ」
「ふふ、当たり前だけどそうですね。これから練習があるので、なんだか赤司君にきっちり包帯を直されそうな気がします」
「く、ははっ、おいテツ、今日は俺がやんなくていーのか」
「僕の予感は当たるんですよ」

笑っているのがばれないようにするすると部室に入れば、本当にかちゃかちゃと救急箱を用意している赤司がいたので思わず笑ってしまった。赤司がキャプテンである理由のひとつが、たしかにここにあるのだ。

130211

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -