君のお願い



*夜(→)+昼
複雑な恋人心の続編





可愛い可愛い君からのお願いなら何だって叶えたいと思う。

だけど、こればかりはきけない。

帰り道に恋人であるゆらに言われた言葉に、リクオは内心で溜息を吐く。

「何でぇ、元気ねぇな?」


気付いたら精神世界にいた昼のリクオは内心でいつ寝ちゃったんだろ、と首を傾げた。

「ううん、何でも「あるからそんな顔してんだろ」

昼のリクオの言葉を遮り、夜のリクオが言えば、昼のリクオは困ったように苦笑した。

「何て言うのかな……
複雑だったんだよ」

「あの女の言葉が…?」

記憶を共有しているから夜のリクオの言葉に昼のリクオは困ったように息を吐く。

「ゆらさんは強くてかっこよくて可愛いから、さ…
僕の憧れでもあるんだけど、彼女に守ると言われる彼氏ってのもどうかな、と思うんだよ」

「そんな事で悩んでるのか
(まあ、アレは別の意味も込められてたんだろうけどな)」

「そんな事って、君みたいに強かったら良かったんだけど!」

「阿保か、俺は畏れられてるだけだ
お前には必要ねぇもんだろうが」

呆れるように夜のリクオは昼のリクオに告げる。

「そう言われても、僕は君に頼りっぱなしだし、いつだって守られてばかりだ」

昼のリクオは情けなくて、みじめだと、自分の不甲斐なさに嘆く。

「お前は俺で俺はお前なんだ
お前が守りてぇもんを俺が守って何がおかしい?」

「それはそうだけど……」

口籠もる昼のリクオを見て夜のリクオは溜息を吐く。

人、というのは良く分からない。

記憶を共有しているといっても、ずっと昼のリクオを見ていても、夜のリクオの理解の範疇を越える。

さりげなく、話をすり替えていることに気付いてない昼のリクオに呆れ半分愛しさ半分。

「(そういう、バカなところも拗ねた顔も可愛いだけなんだよな…)」

ふっ、と息を吐き出すように一瞬だけ切なくも甘く微笑んだ夜のリクオに自分の考えが一杯な昼のリクオは気付かなかった。

「あのなぁ、勇ましい女ならいくらでもいるだろうが」

「そりゃそうだけど…」

「あの女は妖退治専門の陰陽師なんだ、人であるお前を守るってのも道理なんだよ
だったら、お前は人からあの女を守れば良いだけだ」

ふん、と高々と告げる夜のリクオに昼のリクオは一瞬だけきょとんとしたものの、直後に夜のリクオをマジマジと見る。

「……何だよ?」

「いや、何だかんだ言いつつも君、ゆらさんのこと好きだよね」

「止めてくれ、気持ち悪りい……!」

苦々しく言い切る夜のリクオに、以前、ゆらさんにも同じような表情をされたなぁ、と昼のリクオは思う。


「だったらゆらさんを好きにならないでね」

「有るわきゃねぇよ」

だって、未来はどうなるか分からないじゃないか。

もしも君がゆらさんを好きになったら勝ち目がない。

妖や人からも畏れと憧れを抱かずにはいられない君。

どうしてゆらさんが僕を選んだのか分からないけれど。

だからこそ、不安になる。

「彼女だけは譲れないんだ」

「俺だってあんな女要らねぇよ」

切なく懇願するような双眸にドキリ、と心臓を高鳴らせた夜のリクオはそう返すのが精一杯だった。


「(俺だって本当は譲りたくなんかねぇ、俺が欲しいと望むのはいつだってお前だけなんだから)」





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