ただ一つ


君が居て、僕が居て
僕は君を愛してる
君も僕を愛してる


この世界にどれだけの人や妖がいるか分からないけど、

こうやって好き合って、抱き合って、互いの存在を確かめて。

「………何が言いたいんや?」

「あれ、難しかった?」

リクオはゆらの髪を撫でて、ゆらは大人しくリクオの腕の中に居てリクオの好きなようにさせている。

「……いきなり話し出したと思うたら、哲学的な話なんやもん」

「んーつまりね……奇跡みたいだなぁと思ったんだよね」

唸るゆらにリクオは苦笑を零す。

「僕が君を好きになるのは当然なんだけど、君が僕を好きになるのは不思議だと思ってさ」

「……それはウチの台詞なんやけど
(まあリクオくんは鈍感やからなぁ)
確かに奇跡かもしれへんなぁ」

ゆらが言えば、リクオは嬉しそうに笑った。

「アンタの言いたいことはつまりは幸せなんだってことでええの?」

「うん、まあ…そうかな
こうやって、君との時間は好きだし、大切だからね」


「ウチもリクオくんといる時間は好きだし、大切や
リクオくんに触れられるんも髪を撫でられるんも好きやからな」

ゆらが思っていたことを告げるとリクオが愛おしむように甘ったるい笑みを見せる。

「(……この笑顔も好きや
誰も見たことは無いんやろうな……)」

ゆらはリクオのそんな笑みを見てからリクオの胸に擦り寄るように顔を埋める。

「ゆらさん?」

不思議そうなリクオの声にゆらは何て言えば良いのか分からなかった。

「眠いからもう一回寝る」

ぶっきらぼうな言い方になってしまって後悔したけれどリクオが空気を震わせるように笑ったのが分かった。

ただ一つの奇跡、リクオくんはそう言ったけど奇跡なんて本当は思いたくなかった。

奇跡でも偶然でもない必然だったのだとゆらは思いたかった。

そしてゆっくりと目を閉ざせば、優しくも甘さを含んだ声でおやすみと言われる。

奇跡じゃないし、偶然でもない。

必然的にお互いが好きになったんだと思うから幸せだと感じる。

幸せの形はそれぞれ違うけど、

リクオくんが傍にいて、ウチを好いてくれて、こうして熱を分け合って。

ゆらにとってはこれが幸せで、実感もできる。

起きたらきっと優しい笑みで甘さを含んだ声でおはようと言うのだろう。

そんなリクオが安易に想像出来て、ゆらは心の中で笑った。





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