愛に恋う
*ブログネタ
*ずっと…一緒だよ
「はい」
ゆらが手渡されたのはシンプルな携帯。
「何なの、奴良君携帯変えたん?」
「ううん、それはゆらさんのだよ」
その言葉にゆらが訝るように見つめるとリクオは苦笑する。
「あのね、学校だけじゃ、話すのに限られてるし、かと言って僕の都合で携帯に電話とかメールしたら、ゆらさん一人暮らしなのに、お金も掛かるでしょ?
だから、携帯代を僕が払えば問題が解決すると思ってさ」
ゆらは愕然とリクオを見た後、首を横に振りながら、携帯をリクオに返そうとする。
「そらあかんよ、奴良君に迷惑掛けることはできへん」
「良いんだよ、僕の我が儘だし
急に逢いたくなっても逢えるわけじゃないからさ、せめて電話なら邪魔も入らないから貰ってくれる?」
眉を八の形にする、純粋な瞳で見詰められて、ゆらはたじろぐ。
喩えるならば、ダンボールに入った捨て犬が拾ってと自分を見るようだ。
「ね、代金なんて気にしないで
声が聞きたくなった時に聞けるようにしただけなんだから」
「うぅ………分かった」
「本当! 良かった!!」
パアアアア…と輝くような笑顔にゆらは溜息を吐く。
「あ、でも他の人には教えちゃ駄目だよ
二人専用にしたいから
僕も自分のとは別に持ってるから」
リクオがそう言い、見せたのはゆらが持たされたのと色違いの携帯だった。
最初から、誰にも言わないつもりでいたゆらは小さく頷く。
人間の方はともかく、妖怪の方は争奪戦が起こりそうだ。
「ゆらさん、これで離れてもずっと…一緒だよ」
そう言われて、ゆらは掌の携帯が愛しく感じた。
離れても…
ずっと…
奴良君と一緒。
携帯を見ながら、嬉しそうに微笑むゆらを、リクオは愛おしむように、見つめながら微笑む。
これでまた一つ枷が出来た。
ずっと一緒?
離れても?
離さなければ、離れることはない。
離れても彼女の心に自分がいるように。
携帯はその手段の一つに過ぎない。
リクオは自身の強すぎる独占欲に、ゆらに気付かれないように苦笑した。
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