望みは一つだけ



*昼→ゆら前提夜+昼
*ブログネタ/ただ傍にいさせて





「あの女は止めとけ」

リクオは夢の中、夜のリクオと会っていた。

と言うより、彼に無理矢理、此処に呼ばれたと言った方が良いだろうか。


「急に何なの?」

「だからあの女は止めとけってんだ
お前が傷付くだけだ」

彼は僕でもあるのだから、僕の気持ちが彼に筒抜けているのは今更だ。

「好き、だけ…なのに?」

「あの女は花開院家の陰陽師
仮に両想いだろうと奴良組三代目のお前とは結ばれねぇ…」

だからさっさと諦めろと言う彼に僕は笑おうとして失敗した。

「僕は好きでいたいだけだよ
その先、なんて望んでない!」

「今は、な……だがいずれそれは変化する」

顔色変えずに淡々とした口調で夜のリクオは告げる。


同じ存在なのに
同じ年齢なのに
同じ性別なのに

それなのに、人と妖ってだけでこうも違うのかとリクオは思う。


「僕は君みたいに強いわけじゃない
彼女みたいに戦えるわけでもない
だから、ただ傍にいさせて欲しいだけだよ」


ジッと夜のリクオを見上げれば不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた。

「どうなっても知らねぇぞ」

呆れたように言うが、彼なりに心配してるのだと分かっているリクオは嬉しそうに破顔した。



耳と尻尾が見える。
錯覚しそうになって夜のリクオは内心で嘆息する。

キラキラと大きな瞳を輝かせて、笑っているリクオは子犬そのものだ。


夜のリクオ自身、ゆらとリクオの関係をそんなに咎めようとは思ってない。

リクオが傷付くのは嫌だが、ゆらとの関係で、人として成長するだろうから。

実の所、夜のリクオや本家の妖たちは、基本、リクオの望むようにしてきているので、リクオを強制的にゆらと関わるなとは思わないし言わない。

言わないが、妹の方は良いとして、あの悪人面した兄貴が問題なのだ。


京都の時に分かったが、アレの愛情は歪んでる。

勿論、兄なりに妹として大切にしてるんだろう。
妹にしてみれば、遊ばれているようで癪に障るのかもしれないが。


ただ意外にリクオの心は成長しているようで、妹に恋心を抱いてしまったことだ。


悪いとは言わないが、どちらも後継者なのだ。

リクオが傷付くのは目に見えていた。

だからこそ、夜のリクオは強制的にリクオを呼んだのだ。


まあ説得出来るとは夜のリクオ自身思っていない。

どうも同じ存在と言えども、容姿から全て違うせいか、将又(ハタマタ)、リクオが年齢同様に幼いせいなのか、

あの純粋な蜂蜜色の瞳に見つめられると勝てない。

こちらが折れるしかない、と思わせる何かがある。


仕方ない、と夜のリクオは内心で溜息を吐くと触り心地の良いリクオの髪を撫でた。





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