好きが愛しいに変わる頃



*ブログネタ
せめてその時まで





好きで、大好きだけど、
恋を叶えても
愛を結べない


だって、彼は妖怪任侠の奴良組三代目、私は花開院秀元を継ぐから。


好き合うことは許されても、
愛し合うことは赦されない。


「ゆらさん好きだよ」

彼がはにかんで告げる。

「ウチも奴良くんが好きやで」

私もはにかんで告げる。


けれども、絶対に愛してるとは言わないのは奴良くんの優しさで私の弱さだ。

温かくて柔らかくて幸せなのは奴良くんの天性のものだ。

妖怪の方が憧れたり、怖がったり、忠義を誓わずにはいられない畏れを持つとしたら。

人間の方の奴良くんは癒したり和ませたりする畏れを持っているに違いない。

だって、ひなたぼっこしてるみたいに奴良くんの傍は温かいから。

甘さを含んだ声音で名前を呼ばれるのも、話をされるのも好き。

ふわんとした優しい気持ちになれるから。


確かに黙認という形で奴良くんとの交際は認められているけれど、いつかは終わらせられる。

ああ、それでも、とゆらは願わずにはいられない。


せめてその時までは彼の特別は自分だけであって欲しい。

その奴良くんにとっての唯一だけの特別は他の誰にも譲りたくない。


まだ来んといてや。
まだ行かんといて。


当然のように差し出されるその掌も彼の温もりを知ってるのはまだウチだけにしてて。

別れが来ることは絶対やけど、別れたくないと思うくらいはウチの自由や。


ただ一つ我が儘を言うなら奴良くんもウチと同じ気持ちならええな。





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