それからルートヴィッヒは長い間ギルベルトと共に在った。
回復したギルベルトは弟が国になったと知ると様々な訓練を始めた。
頭を使うものから身体を使うものまで逃げ出したくなるような厳しさだったが、訓練以外では今まで以上にルートヴィッヒを可愛がった。
離れてしまった期間もあったが、それ以外は周囲が酷いブラコンと言う位ギルベルトはルートヴィッヒに付きまとっていた。
「俺様のヴェストは世界一!」が口癖だ。


そのギルベルトが、ある日倒れた。それから目覚めることなく今も昏々と眠り続けている。
医者に見せても原因は分からず、外傷もない。自身が国となった日を思い出される事態に不安を掻き立てられる。
狼狽えるルートヴィッヒに沈痛な面持ちで「申し上げにくいですが…」と言ってきたのは友人の菊だ。
「ギルベルト君が目を醒ますことは恐らくありません。」
同じことを後日訪れたフェリシアーノも言った。
「国は国土と国民が命なんだ。ギルベルトにはそれがないでしょ?」

しかしルートヴィッヒが国になる際の願いはギルベルトの生存だった。
願いの奇跡で彼は国土がなくとも死なないはずなのだ。現に一度死の縁から生還を果たしている。
ギルベルトとルートヴィッヒに起きた事態を知って訪れてくれた国達に見つめられるなか、ルートヴィッヒはそう主張した。
その主張に答えたのは、存在する国のなかでも恐らく最年長の燿だった。
体は残っているじゃないかと。

「国は死んだら体が消えちまうある。プロイセンはとっくに国として死んでた訳あるが、体が残ってるのはお前の願いのおかげじゃねーあるか?」
かつてギルベルトが化身として担当した東ドイツが併合されて久しい。その名は歴史に残るだけだ。かつてドイツが分かれていたという知識は有っても、それを感覚として有していた世代は完全に絶えてしまった。
もはやドイツ全体が余すとこなくルートヴィッヒのものとなっているのである。

何も返すことが出来ないルートヴィッヒに菊が告げる。
「プロイセン君は永遠に消えることなくこのままでしょう。それはドイツさんの今後に良くないと私は思います。酷なようですが、彼を埋葬するのはどうでしょうか?」
「それはあんまりだと思うんだぞ!」
ルートヴィッヒが異議を唱えるより先にアルフレッドが反論した。
まだ望みを捨てるべきじゃないという彼を、アーサーが黙らせる。
「望みはない。お前らはまだ若いから分からないかもしれないけどな。」

沈黙が降りた。
悲壮な顔でギルベルトを見下ろすルートヴィッヒの横に立ち、ローデリヒがその頭を優しく撫でた。
「ドイツ。あなたは国になったんです。ドイツの国の為に尽くさねばなりません。」
国としてどう在ればいいかは、ギルベルトから骨の髄まで叩き込まれていた。




ルートヴィッヒには毎日の習慣が一つ増えた。毎朝欠かすことなく花を手向ける。
ギルベルトが倒れた直後はこの世の終わりのような気分だったが、きちんと区切りを着けたら自然と気持ちの整理もついた。

「行ってきます兄さん。」
今も深い土の下で、ギルベルトは変わらぬ姿のままで居るのだろう。




キュウべぇの「僕と契約して〜」をやりたかっただけだったことがよく解る原作設定無視です(笑)
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