風の神殿からトゥールの町へ。
タイクーン王のことで酷く落ち込んでいたレナだったが、「クリスタルを頼む。」という言葉のためだろうか、その目にもはや悲しみの色はない。強い使命感を宿し、しっかり前を見つめている。

「姫さんは立ち直ったようだな。」
レナを見つめるバッツの横にファリスがやって来た。
レナを見つめる目は海賊の頭とは思えない穏やかさだ。
「…ありがとな。ファリス。」
「何が?」
「レナのことだよ。」
ファリスが落ち込むレナをさりげなく気遣っているのをバッツは見ていた。
それに彼女が立ち直れたのはファリス配下の海賊たちが明るいせいもある。
「お前達のおかげだ。俺とがラフだけじゃなぁ…。俺不器用だし。」
「ふん。姫さんが元々強かったって話だろ。」
「お前素直じゃねーなー!礼は大人しく受け取っとけよ!」
そっぽを向いたファリスの首に抱きつきそのまま締める。
出会ってまもないが、これくらいのじゃれあいをする程度には仲良くなった。
「苦しいんだよ!離せこの野郎!」
「非力だなお前〜!……ん?」
バッツはあることに気付いた。ファリスと体が密着している訳だが、何かおかしい。
「お前…痩せすぎじゃないか?」
コート越しに感じる体が妙に細い。成人男性にしては細すぎる。今まで分厚いコートを着ていたから気付かなかった。
「お前もうちょっと食えよ!これじゃ死ぬって!」
ファリスを解放し、コートの上から彼の肩や腰のあたりを両手でぽんぽんと挟むようにして確かめる。
やはり細い。
「お心遣いどうも…。」
顔を上げたバッツはファリスの顔が強張っていることにようやく気がついた。

(海賊の頭に痩せすぎってのは不味かったかな…?)

ファリスはそんな己を恥じて分厚いコートで体を隠していたのかもしれない。
気のきかないことをしてしまった。

「その…ごめん。」
「…別にいいよ。」

そう言ってファリスは船内に消えてしまった。
彼の背中を見送るバッツの後頭部に突如衝撃がはしる。
「痛っ!?」
驚いて振り向くと海賊達がいた。全員揃っているのではないだろうか。
なんだか表情が怖い。
「な…なんだよ急に。船の操縦平気なのか?」
その威圧感に気圧されたバッツが尋ねると、彼らは持ち場に戻った。戻りざまに一人一発づつバッツを小突いてゆく。
「いってぇな!何なんだよ!!」





その理由をバッツが知るのはもう少し後のことである。


一番最初にやったRPGがFF5でした。今でも大好き!
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