忍と竜が結婚とか、細かいことを気にしない方はどうぞ





猿飛佐助は主の呼びかけに城の屋根から飛び降りた。
彼がいる場所から少し離れたところにある幸村の自室からの呼んでいるようだ。

食事の時間でもなければおやつの時間でもない。
先程まで警備していた限りでは客人でもない。
ではなんだろうかと主の部屋へ急いだ佐助は、入室早々かけられた幸村の言葉に危うく転びかけた。

「佐助休め!恋人の元へ行くのだ!破廉恥でござる!」
「はぁ!?何言ってんの!?」

自分で言っておいて人のことを破廉恥呼ばわりするとは納得できない。それに何故恋人なのか。
額を押さえつつ、佐助は幸村の話を理解しようと問いかけた。
「何で恋人とのところなのよ?俺様にイイ人は居ませんよ。」
「む…。佐助は若いのに仕事ばかりでたまには休ませろと親方様がな。それに前田殿が休みの日には恋人や妻と会うものだと…。」
どうやら佐助に休みを取らせようと考えていたところに前田慶次から余計な入れ知恵をされ、ごちゃごちゃになってしまったようだ。
「風来坊の奴…。」
佐助の慶次に対する心証は悪くなる一方である。
初対面にいきなり殴られたお返しもしていないことだし、今度来たとき茶に痺れ薬でも混ぜてやろうかと佐助が考えていると、幸村が「ならば恋人を作れ佐助!結婚してこい!」と言い放った。
前田慶次の言う休日の過ごし方をどうあっても実行させるつもりらしい。
「そりゃ無理ってもんだよ旦那。」
始終幸村と共にいる佐助の元へ来てくれる奇特な娘がそうそういる筈もない。
尚も食いさがろうする幸村に「俺様お仕事第一主義ですから。」と言い放って佐助は逃げた。





月日は流れ、どういう訳か佐助はちゃっかり結婚していた。
しかも相手は奥州の独眼竜伊達政宗である。
どうやって落としたか全くの謎であった。

「お主…よく結婚できたな…。」
「まぁね。結婚っていっても今までと何も変わらないから安心してよ。」
佐助は幸村に晴れやかな笑顔で結婚の事後報告に来ていた。
小十郎の強固な反対や闇討ちと様々な苦労を乗り越えてきたのだ。
政宗は絶対に奥州から出さないという条件付きとなってしまったが、佐助の感動もひとしおである。
「で、旦那。ものは相談なんだけどさ。俺様に休みをくださいませんかね?」
政宗は奥州から出てこられないため佐助が奥州に出向くしかない。一応新婚なのだから少しでも長く側に居たいのだろう。
少し前まで休めというのを断っていた佐助が変わったものだ。

そんな佐助の申し出を、幸村は笑顔で突っぱねた。
「面白いから却下だ!」
「えっ、何で!?小十郎さんに結婚解消されちゃうって!あの人こっちの隙を虎視眈々と狙ってんだから!」
「それも面白いではないか。」
「それひどくない?!」
確かに小十郎なら、あまり会いに来れない佐助に難癖をつけて結婚の解消くらいやってのけるだろう。
それはそれで佐助に甲斐性がなかっただけの話だ。

「お仕事第一主義なのだろう?」

そう言って笑う幸村は少し政宗に似ていた。



幸村は政宗の影響で若干意地悪になりました。
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