ゲッチューまごころ便パロです。





「再検査?」
幸村は眉をひそめた。
「おうよ。明日まで飯食えねぇんだよぉ〜…。」
元親が溜め息をつく。いつも明るい慶次も項垂れていた。

元親と慶次の二人がこの前行われた健康診断に引っ掛かった。明日が再検査である。
「仕方ないではござらぬか。己の健康のためでござる。」
どうせ元親がヘビースモーカー、慶次が大酒飲みだから引っかかったのだ。周りが何を言っても改めないのだからこの際反省すればいい。

「冗談じゃねーよ。俺達肉体労働なんだぜ?」
「あーあ。今日休みもらえばよかったかなー」
「そちらこそ冗談を申すな!明日休まれるというのに断食程度で休むなど!」

このタイガー便株式会社は小さな会社だ。従業員の数は多くない。体格がよく力のある元親と慶次に休まれるのは大きな痛手だった。

「俺は一日程度の断食、平気でござる!二人には根性が足りん!!」
「ほーう……」


こうして幸村は元親と慶次に付き合って一日断食する羽目になった。



「大見栄きってよかったの?旦那腹っ減らしじゃない。」
「ふん!全く情けない…!これくらいどうということはない!」
監視役の佐助にぶつくさと文句を言いながら幸村は担当地区内を移動していた。佐助は面白そうだからと休日を潰して監視役をかってでたのだ。


ちなみに幸村が一日耐えられた場合焼肉を二人から奢ってもらえる。一口でも食べた場合は彼の奢りだ。






「あら真田君。ちょっと食べて行きませぬか?」

(……予想はしていたでござる…)

幸村と佐助は近所の美人妻、まつに玄関先で呼び止められていた。彼女は慶次の義姉である。
「今日慶次はお弁当がいらないらしくて…」
いつも重箱弁当を持ってきている慶次の分までおかずを作ってしまい、困っているというのだ。

「綺麗だし美味しいですね〜」
次々と料理を口に運ぶ佐助が恨めしい。
まつの料理の腕前は一流である。
「真田君は?」
「い…今仕事中ですので…」
いつも頂き物はその場で食べている幸村としては苦しい言い訳だったが、なんとか乗り切った。


しかし苦労は続いた。
その後道行く人々が彼らに食べ物を寄越してくるのである。
明るく食べっぷりのいい幸村は人気者であった。



「美味しいよ市さんのクッキー。見た目はグロいけど。」
「お主…人を馬鹿にしているのか?」
漆黒のクッキーを貪る佐助を睨む。
普段小食のくせに今日の佐助はずっと幸村の隣でものを食べていた。
美味しそうな香りが胃を刺激する。
「美味しいものはいくらでも食べられるよね〜。あ、伊達ちゃんだ。」
「幸村ぁ〜!」
「政宗殿!」
伊達政宗は男であるが幸村の思い人である。幸村がアタックしては突っぱねられていた。
仕事が忙しい幸村は少ない休日か学校でなければ彼に会えないので嬉しそうだ。
政宗は周りに花を散らすような笑顔でこちらに走りよってくる。
「今日は丁度暇だったからよー。」
幸村の前で止まった政宗はそう言って持っていた紙袋から恥じらいつつ弁当を取りだした。

「ま……政宗殿?」
「いつも頑張ってる幸村に弁当とかどうかなーって…」

彼の取り出した弁当はいかにも愛妻弁当といった可愛らしいもので、白米の上にハートまで描いてある。

「あの……政宗殿…?」

「大したもの入ってないけど美味いぜ?ほらあーん。」

「いや……政宗殿?」

いつも素っ気ない彼の変貌ぶりに対する戸惑いと、今日一日食べることが出来ないために幸村は固まったまま動けない。
しばらく固まっていると政宗は急に弁当を放り出した。

「幸村のバカ!俺の手料理なんか食えねぇってんだな!」
「ちょっ…!政宗殿?!」
「俺より仕事の方が大事なんてぇぇぇぇ!」

急な展開に動けない幸村の元から政宗は走り去る。宙を舞う弁当は佐助が華麗にキャッチした。

政宗は離れるにつれ笑い出し、少し離れた曲がり角を曲がる頃には爆笑していた。

「まっ…政宗殿ー!!!誰から聞いたのですかー!!」

確実に幸村をからかって遊んでいる。誰かが情報を流したのだ。


「チカちゃんと慶次かね?やっぱ。」
「……………」
「旦那?」
政宗の手作り弁当さえけったのだ。もう何も怖いものはない。
人の弱味を突こうとした元親と慶次にどうあっても焼肉を奢らせねばならない。
「…佐助…俺はこの勝負、絶対に負けん…。」



検査の結果元親も慶次も異常は見つからなかった。
スポンサーも彼らである。



情熱が先走った文になってしまった…。大好きなんですゲッチューまごころ便。
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