act.1 (1/4)


「おい、居たか?!」
「居ないわ!」
「こっちにも居ない!」
「一体どこに行ったんだ?」
『寝ている間に何かあったのかな…』

早朝、まだ陽が完全に昇ってない頃バクモンは気付いたらもう居なくなっており、子ども達は良い夢を見たせいか、目覚めの良い朝を迎えていた。
だが、一緒に行動をしていた筈の輝二とボコモン、ネーモンの姿が居なくなっており、子ども達は朝から起き始めている声を上げて探し始める。
何度か声を張り上げて名前を呼ぶが返事はない。輝二はともかくボコモンとネーモンは少なくとも返事をしてくれるであろう。しかしどちらの声が返ってこないという事は、もう既に遠くに行ってしまったのだろう。
また、仲間が欠けてしまった。

陽が完全に昇ってきたころ、暗かった森の中は眩しい太陽により明るく照らされる。それはまるで昨夜あった出来事を思い出させるような、そんな感覚。子ども達は急に来た太陽の眩しさに目を傘にしながら見つめた。

「まいったな、ボコモンとネーモンもいなくなってるみたいだし…」

輝二だけなら彼は一人行動が好きな為、今まで通り一人で行動すると思われるが今はボコモンとネーモンの姿までもないのなら話しは別だ。
さて、どうした物かと頭を抱えた時、友樹が何かを見つけたようで「あ!」と声を上げると、見つけた方へと駆け寄る。
そこは、輝二が眠っていた場所に風に飛ばされないよう、メモの上に石が置かれていた。

「何だろう…」

友樹の見つけた物を、見に行く。すると、そこにはメモが書かれており、それを見た瞬間子ども達は驚いたように声を上げた。

「“先に行く 輝二”だって…」
「ボコモンとネーモンも!?」

単純明快に書かれたメモは子ども達には十分伝わった。要するに彼は何かあったは良いが、それを仲間である自分達にこのメモで伝え先に進んだのだ。そして、そのメモの下には黄色いペンでネーモンの絵、桃色のペンでボコモンの絵が描いてあった。
どうやらこの二匹のデジモンは輝二に付いて行ったのだろう。それを見て、純平は呆れたように溜め息を吐いた。

「輝二の奴、勝手だなぁ」
「一人が好きなのね、本当に。…まあ、気持ちは分からなくはないけど、」
『何かあった訳じゃなかったんだね』
「でも、どうして――…ああ!」

一人ひとり何故輝ニはまた一人で行動してしまったのか、考察を入れていれば、友樹の持っていた紙は消え去る。それは、勝手に行動をした輝二に腹が立った純平による物で、彼はぐちゃぐちゃと乱暴に扱うとそれを破り捨てた。

「ったく!協調性ってもんが無いんだよ!アイツは!」
「それを言われると俺も弱いな…」
『え?』
「俺もよくコーチに言われたんだ。サッカーやる度に協調性が無いってさ…」

突然拓也は走り出した。どうしたのだろう、とその様子を見ていれば、拓也は生えていた草を蹴り上げる。蹴る力が強かったのか葉がパラパラと舞う。きっと、今のがサッカーをしている拓也の姿だったのだ、と察する事が出来た。
サッカーをしている時の自分を、思い出したのだろう。

「―俺達も行こうぜ!」

振り向いた拓也の姿は太陽の光を背にしていたせいか、かっこよく見えた。


伝説や噂。そういうモノが好きなのは人間も、デジモンもそうだった。ただ、それを信じていれば、の話し。
“彼”は、そんな掴めないような伝説を信じている一人であり、その伝説を本物にしようと、していた。

三つの目が光る時、伝説の闘士の魂が蘇える。

自分の体に良く似た岩肌に刻まれている“光”の文字を愛おしそうに撫でる彼。その文字を刻む大きな岩を見上げると、確かな希望をその目に宿した。
周りと比べてその岩は一つの小さな穴を開けており、他の岩二つには赤い宝石のような物が埋め込まれていた。

―あと一つ。あと一つ。

そう自分に言い聞かせ、あと一つの物を探す為、彼は直ぐに岩から離れた。


綺麗な水たまり。
そこへ輝二は疲れた体を休ませる為、そして乾いてしまった喉を潤す為手に水を汲ませるとその水を飲み込む。
そんな輝二を見ると、ボコモンとネーモンは静かに見守っていた。

「ねぇー何で後を付いてきたのー?」
「バカモン!昨夜、輝二はんのデジヴァイスにメールが入ったのを知らんのか?
…何かある筈じゃ…輝二はんの身辺で何か起こるに違いないで」

ボコモンは疲れた様子ではなかったらしいが、その後を追っていたネーモンは疲れていたのか、ボコモンが止まった途端に転んでしまう。そして、何故付いて行くのかを尋ねてみれば、ボコモンはどうやらあのメッセージを聞いていたらしく、輝二の周りで近々何かが起きると予測して付いて来た、との事。
その瞬間を、見ておきたくて付いて行っているのだ、と。

「ねえねえボコモン」
「なんじゃ」
「俺ネーモン。バカモンじゃないよ」
「ムッ、ゴムパッチンじゃ」

何か重要な事を言うかと思われたネーモンの発言を聞いていたが、それは今ボコモンにはどうでも良く、ネーモンの表情も何だか小馬鹿にしているような表情だったので、彼の必殺技の一つであるゴムパッチンをネーモンに食らわした。
だが、それが間違いだったのか、バチンッと森中に響きそうなくらい大きな音が出てしまい、デジヴァイスに何やら話しかけていた輝二に気付かれてしまった。

「お前ら!もう付いてくるな!」

逃げ出すように、近くにあった自分の姿を隠すぐらい長く生えている草原に潜り込み、それをボコモンとネーモンは引き返さず追っていく。

だが、輝二の潜り込んだ草原の先は崖になっており、落ちる事はなかったが、輝二は引き返せなくなってしまった。
それを知ってか知らずか、ボコモンとネーモンは輝ニに飛びつくと、そのままの勢いにより崖から落ちてしまった。






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