act.2 (2/6)


「何してる、早く来て下され」
「って、キミ達は壁にへばり付いて動けるから良いけどさぁ…俺達は…」

真上にはこちらを壁にへばり付きながら見下げているカラツキヌメモン達。柵のおかげで落ちる事が無く何とか助かった子ども達。しかし子ども達は先程体感した様に下には先程辿ってきた線路と少し離れた所にトンネル。線路はひたすら上へと伸びていた為その高さは身近な物で例えるなら東京タワー…いや、それ以上と言っても過言ではない程の高さである。
その高さを実感した瞬間、身の毛がよだちここから先に動けなくなってしまった。

「あたし達、どうやってそっちに行ったらいいの?」

泉がそう問いかけた時、カラツキヌメモン達はどこからか取り出してきたであろう梯子を子ども達の方に降ろしてきた。どうやらこれで登って行けば良いらしい。それを見た拓也は「よぉっし」と一番初めにその梯子に登り始めた。彼一人登ってもビクともしない辺りしっかりとカラツキヌメモン達は抑えてくれているらしい。その次は友樹、ボコモン、ネーモンという順番で上る事になった。

「レディファースト!結衣ちゃん達先に行って!」
『ありがとう純平』

純平は友樹が行くのを見た後、次に結衣達に視線を戻した。そして、お先にどうぞと誘導された結衣はそのお言葉に甘え、先に梯子に手をかけて登っていく。その次にきっと泉が来るだろう、と予想をしていたが不意に下から随分と乾いた平手打ちが聞こえてきた。

『あ、そういえば泉はスカートだったっけ…私は短パンだから大丈夫だけど、』

優しさは満点だったが、デリカシーに関しては減点的だっただろう。今の純平には逆効果だったか、と不憫な純平の顔を予想しながら苦笑の笑みを浮かべた。
そんな事が密にありつつ、梯子を辿ればようやく一つの家に梯子が繋がっているのが見えた。のと同時に友樹の制する声と拓也の怒声の声が何やら上から聞こえてきた。
どうやら、拓也はその家の中に居た誰かに頭を思い切り殴られたらしい。

「何しやがる!―…あ、お前…」

拓也は殴ってきた当人を確認する様に身を乗り出す。するとそこには炎のターミナルで出会い、森のターミナルの時やそよ風村、そして結衣にとってはあの森以来である少年の姿が見えた。

「何だ、お前等の事だったのか」
『あれ、この声…』
「うわっと、結衣!?」

拓也の怒声の次に聞こえてきた随分と聞き覚えのある声に、ふと蘇るあの日の戦いの記憶。いや、あの戦いだけじゃない。他にも炎のターミナル、森のターミナルでの事やそよ風村での戦い、そして最近あった戦いでファングモン達との戦闘で何度か助けて貰った、あの少年の面影。
友樹に申し訳なさそうになりながら器用に隙間に梯子へ足を引っかけながら先に登り拓也の背中を借りて、中の様子を見てみればやはりそこには自分の想像していた通りの少年が。
青い黄色の線の入ったジャージに、青いバンダナ、長い髪を一つに結って、長い木の棒を構えているのは間違いなく輝ニだった。

『輝ニ君…!』
「結衣…、」

再会したのはつい昨日の事。にも関わらず久しぶりの様な感覚。思えば昨日の事に関しては、恐怖に怯える事もあったが彼のおかげで孤独に怯える事は無かったし、無事自分のスピリットを手に入れ戦う事も出来た。尚且つ仲間にもこうして出会え、再びここで再会する事が出来た。
それだけで、結衣にとっては嬉しかった。輝ニもまた拓也が居る事で察してはいたが、仲間に会う事が出来たのだ、と理解すると無意識に顔を僅かに綻ばせる。

『あ、あの輝ニ君、あの時は一緒にいてくれてありがとう』
「いや、別に…」
「……」

そこへ結衣のお礼が降ってくるものだから輝ニはハッと我に返った様に視線を逸らしながらも素っ気なく返事を返す。相変わらずどこか人を寄せ付けない様な雰囲気だが、それでも前より表情が読めるようになったのはきっと、あの戦いがあってからこそだ。
そんな読めない二人のやり取りを拓也は面白くなさそうに唇を尖らせる。
何故、自分ではなく輝ニと一緒に居たんだ、と何故かそれだけを悔やんだ。

『で、拓也はどうしたの?』
「拓也…?」
「…コイツが、いきなりあの棒で殴りかかってきやがったんだよ」
『え!?だ、大丈夫なの?』
「え?あ、あぁ平気平気!俺石頭だから!」

再会を喜ぶ中、そういえば拓也は怒っていたのだと思い出してはその事について尋ねる。説明を受けると同時に輝二の持っていた木の棒はそのためだったのかと納得。輝二の棒裁きは結衣もよく理解している為、いくら本人は石頭と言った所で痛みを感じない訳ではない。拓也を心配そうに見やり、拓也もまた大丈夫だと、僅かに頬を赤らめながらも応えた。
その光景を今度は輝ニが面白くなさそうにする番となった。
そして―…

―ゴスッ!

「いってぇぇー!!」
『た、拓也!?』
「フンッ、」
「この野郎〜!一度ならず二度までも!!」
『お、落ち着いて拓也!』

輝ニ君も一体どうしたの!?と言いたげに二度も殴られた拓也とまた殴ってきた輝ニを交互に見る。その様子を見ていた後の子ども達は苦笑の笑みを浮かべたが、直ぐに話題を変えた。

「どうして殴ったの?」
「…他にも助っ人が来ると聞いたから、どれだけ腕が立つか試したんだ。それが全く隙だらけとはな」
「…それは」
「助っ人にならんな」

溜息混じりに呆れて物を言う輝ニ。助っ人=強いデジモン、という方程式に輝ニの中ではイメージが固められてたらしいが、メシという物だけに釣られてきただけの助っ人では輝ニも助っ人にすらならないと判別。更にでれでれと緊張感のないそんな拓也の顔に腹が立ったのも言うまでもない。

「皆さん、遠い所よく来てくださった。さっそくメシの支度を」
『「「「「わーい!メシだぁ!!」」」」』

何はともあれ、無事に村に来れた子ども達。カラツキヌメモン達の助っ人になってくれる代わりにメシを食べ放題、という事でやっとこの空腹の腹をどうにか満たす事が出来ると気が緩み喜びの声を上げる。だがしかし、家が岩山にくっついていて上下左右とも違う為、子ども達は扉から落ちてしまい輝ニの居る所へと落ちてしまったが、輝二にとっては想定内。上手く交わしてみせた。

『…く、苦しい…』
「うわぁ!!純平さん!早く降りないと結衣さんが死んじゃう!」
「俺だけの所為!?俺の上にだって泉ちゃんが居るんだぞ!?」
「あたしが重いって言うの!?」
「どうでも良いから…皆早く降りろー!!」

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