act.2 (2/3)


ナノモン達の見送りを済ませた後、純平たちと合流し二人が飛んで行った方へと機械を向ける。
泉は方向転換をする為のタイヤを回す係。友樹もまたタイヤを回す役割を担い、更に遠くまで見ることが出来る望遠鏡を覗く。
そして輝一は雪玉を発射させる装置を動かす係。純平がその装置に雪玉を乗せ、悠太とボコモン達デジモン達は雪玉が無くならない様に補充する係、そして結衣は放射した装置を元の位置に戻す係となった。
此方の準備は万端。後は二人がロイヤルナイツの二人を戦いながら連れて来てくれれば尚良い。

冷たい風が吹雪き、雪原の雪が舞い上がる。それでも誰もが油断せず、緊迫とした表情で空を見上げていた。
パタモンは飛びながら上空での気配を探り、数分――上空に四つの光が灯った。

「来たです!」

パタモンの合図に、悠太が純平に雪玉を渡し、その渡された雪玉をセットする。
これを輝一が掴む引き金を動かせばその咆哮に雪玉が飛ぶという仕組みとなっている。後は友樹の合図があれば放射可能だ。
四つの光が徐々にこちらへ近づいてきた頃、子ども達の肉眼でも確認が取れる程には目視出来た。
カイゼルグレイモンとロードナイトモンの姿。遠くの方ではマグナガルルモンとデュナスモンが戦っている。
息を呑み、友樹の支持をひたすら待つ。

「もう少し待って…」
「うん」

今放射してしまえばカイゼルグレイモンに当たってしまう。隙を伺い、輝一もいつでも放射出来る様に握る手に力を込めた。
ロードナイトモンの影になってしまっているカイゼルグレイモン。何とかしてロードナイトモンへと当ててしまいたいが、下手に此方から退く様に言っても素早いロードナイトモンには逃げられ、作戦も無駄にしてしまう。
どうすれば、子ども達の誰もが逸る気持ちになった時、カイゼルグレイモンが汲んだ様に突然ロードナイトモンの前から退くように急上昇。

「今だ!」
「発射!!」

まだこちらに気付いていない。その隙に友樹が支持を出し、輝一が思い切り引き金を引く。
流石はナノモンお墨付きの装置だったのか、装置から放たれた雪玉は勢いよくロードナイトモンの方へと飛んでいき、そのままロードナイトモンへと命中。
突然の雪玉直撃に怯むロードナイトモン。
標的が逃げない様に、結衣がすかさず装置を元の位置に下げ、その下げられた装置へ純平が雪玉をセット。

「発射!!」

短い間も開けず、輝一は引き金を引く。その雪玉もまたロードナイトモンへと命中した。
ロードナイトモンに隙が出来た時、カイゼルグレイモンは大剣を構えロードナイトモンへと向かって行こうとする。しかしそう長くは隙を見せてくれなかったようで、飛び掛かってきたデュナスモンによりカイゼルグレイモンは押されてしまい、その勢いのままアキバマーケットの方まで下っていってしまう。

激しい衝突音と砂煙に、心配そうにパタモンが離れた場所で見下げる中、ロードナイトモンは子ども達をジッと眺めていた。
攻撃を伺っているのか否か、あまり心地の良い物ではない。そんな彼の背後にマグナガルルモンが迫り、お互いに標的を変える。

「“スパイラルマスカレード”!」

マグナガルルモンへロードナイトモンが鋭利にした帯刃を構えながら襲い掛かっていく。その素早い動きにマグナガルルモンが苦戦しており、友樹が望遠鏡を覗き込み隙を伺う。
しかし、動き出したロードナイトモンの動きは肉眼では定める事が出来ない。

「駄目だ、動きが速すぎて狙いを定められない!」
「このままじゃ、マグナガルルモンが…!」
「カイゼルグレイモンが危ないです!」
「「「えぇっ!?」」」
『…拓也っ、』

不意に聞こえてきたパタモンの声に、子ども達の視線は先程町の方に落ちていったカイゼルグレイモンとデュナスモンの方へ。
振り返れば、カイゼルグレイモンがデュナスモンにより大型ストーブに押し付けられている姿が目に入った。
確かあの熱はアキバマーケットを寒さから守る熱の役目を果たしているストーブ。相当の熱だろう、そこへカイゼルグレイモンが抑えつけられている。

「回れ右よ!」

装置のタイヤを回し、雪玉の標的をロードナイトモンからデュナスモンに変更した。

「そこだ!」
「喰らえ!」

幸い此方に気付いていない。友樹は狙いを定めると合図を出し、輝一もまた雪玉を放射。
勢いよく放たれる雪玉。このままいけば直撃だろう、そして生まれた隙にまたカイゼルグレイモンが反撃をしてくれれば――
そう予想まではしていたが、誰もがこのストーブの熱量に雪玉がどうなってしまうかは予想していなかったのだろう、徐々にアキバマーケットへ近づく雪玉は熱に負けて水滴を散らしながらその大きさを小さくしていく。
そして、デュナスモンにあと少しで当たる頃には蒸発してしまっていた。

「ストーブタワーの熱で溶けちゃう…!」
「頑張って、カイゼルグレイモン!」

『…、大丈夫、なのかもしれない』
「え…?」
「大丈夫って、どういう事?結衣、」

焦る子ども達の中、何かに気付いたのか結衣がそう静かに言葉をこぼした。
その言葉の意図が今一ピンとこなかったのか、子ども達の視線は結衣へと向かい、その視線に気付いた結衣は「いや、」と頬を掻きながらボコモンへと視線を下げた。

『ボコモン、伝説の闘士は自分の属性に合った場所なら、戦闘能力がいつもの数倍にも上がる筈って言ってたよね』
「言ったぞい」
『炎の属性を持つカイゼルグレイモンがストーブタワーの近くにいる。それなら…』
「!そっか、それならカイゼルグレイモンの能力は今…!」

その言葉の続きは語らずとも、目の前でカイゼルグレイモンが証明し始める。
デュナスモンの掴む腕を固定し、カイゼルグレイモンの体から溢れ出る炎の渦。それらはデュナスモンを焼き焦がす様に容赦なく飲み込んでいった。
そんな熱にデュナスモンは耐えられる訳もなく、カイゼルグレイモンから手を離し地面へ転がるその様は今までの戦いの中では見た事のない姿だった。

そしてそんな隙を見逃す筈もなく、カイゼルグレイモンはそのままデュナスモンに馬乗りになる。
これでこちらが優勢になった。

「こっちは何とかなりそうね」
『うん、輝二の方をサポートしよう』
「了解!」

雪玉の標的をデュナスモンからロードナイトモンへ。再び装置を動かし、ロードナイトモンの方へと装置を向ければ友樹は望遠鏡から様子を伺う。
マグナガルルモンが雪原に体を撃ち込み、そこへロードナイトモンが攻撃を仕掛ける。
今正に攻撃がマグナガルルモンの体に入ろうとした時、その僅かな隙を見つけた。

「今だ!」
「発射!!」

マグナガルルモンもまた此方の意図を汲み、ロードナイトモンから後退る。避けた事によりロードナイトモンへと雪玉が勢いよく顔面へと入る。
技が繰り出される瞬間だったようで、空へとその攻撃が放たれたが、その攻撃は軌道を変えてしまい、そのまま子ども達の方へと向かってきていた。

『攻撃が…!』
「輝一ぃー!」

軌道を変えたロードナイトモンの攻撃。子ども達に迫っていく中、マグナガルルモンがその子ども達から庇う様に体を潜り込ませながら間に入り、代わりにその攻撃を食らってしまう。
一度は避けれたその攻撃を結局は食らってしまい、マグナガルルモンの装備が衝撃で外れてしまう中、子ども達はあまりの衝撃により意識を手放してしまった。






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