act.5 (5/9)


『そもそもね、ドルモンと出会ったのはツカイモンと一緒。この世界に初めてきた時』

拓也がアグニモンに進化した後、逸れてしまった純平と友樹を探す時に声を掛けたデジモンがその二人。その時は二人ともこちらに近付こうともしなかったが、先々の旅で拓也達と逸れ結衣とボコモン達だけになってしまった時、助けてくれたのは間違いなくツカイモンとドルモンだった。

『その時は輝二も居てくれたんだけどね』
「そうだな」
『初めて名前を知ったのはその時かな、ファングモン達に襲われたときにも助けて貰ったの』

勝ち目のない戦いでも、結衣を助けようと体を張ってくれた二人。
スピリットを手にし、一度離れたがその後も助けて貰っていた。
おもちゃの国で、デジヴァイスを奪われてしまったとき、ひっそりとデジヴァイスを返しに来てくれた。
しかし、闇の大陸に来て再会した時にツカイモンは敵に。そして、そのツカイモンの口から出た衝撃の事実。

『ドルモンは、死んでしまった。』
「…そういえば言ってたわね」
「何の事か、よく分からなかったけど…」
「そういう事があったのかぁ…」
『…ベルゼブモンになってしまったツカイモンを助ける為に、私は皆と一度離れて戦いに行ったの。それが私の出来る事だと、思ったから。』

皆には話していない、本当の狙い。改めて口にすれば自分は本当に無謀な事をしていた様にも思える。その事に関しては、「本当よ!」と泉に口を挟まれてしまったが、苦笑しか出来なかった。
ベルゼブモンのデータをスキャンし、ツカイモンは元の姿に戻ったが彼はまだ闇から抜ける事が出来ずに決別の言葉を口にし飛び立ってしまった。
その時、気付けば自分は黒い海の中にいた。

「黒い海…」
「悠太君も見えてたんだよね?」
「…うん、…ボクもその海に行った事がある、から」
「俺たちには見えなかったけど、」
『多分、黒い海は…デジタルワールドのどこにも無いと思う。別世界の物って言えばいいのかな、』
「別世界…それって前ワイズモンの本の中に行った時みたいな感じか?」
『うん、多分そう。別の世界の異空間』

恐らく、あの声を聞いた時にはもう、自分は別世界に連れ込まれていた。
闇の中の誰かの声。
その海しかない世界に、ドルモンが現れた。

「え、ドルモン?」
「ドルモン死んでたんじゃ…」
『うん…』

恐らくお化けの類…というよりもあれはドルモンのデータ。そのドルモンのデータが自分に声を掛け、その海の中から救い出してくれた。
そして、彼は結衣のデジヴァイスの中に身を顰め、今に至る。

『だからあの子はドルモンの生まれ変わりで間違いないんだけど…』
「……」

子ども達と距離を置きながら様子を伺うその姿はあまりにも生前のドルモンらしからぬ姿である。やはり生まれ変わりなだけあり、ドルモン自身ではもう無くなったのであろう。
分かってはいた事だったが、実際にこうして避けられてしまうと流石に寂しい物がある。

「そうか…、ありがとな、話してくれて」
『ううん。長くなってごめんね聞いてくれてありがとう』
「結衣さん、気を落とさないで下さい。そもそもドルモンというデジモンがそれだけ大人しいのは珍しい事なんですよ?」
『え、そうなの?』
「はい。ドルモンは闘争本能が高く、何にでもよく噛み付きよく吼えるんです。伝説の生き物“ドラゴン”の強い生命力のデータを持っていて、強大なデジモンに成長する可能性をもつと言われているんです」

そんな情報、初めて聞いたと目を見開き再度ドドモンを見つめる。
生まれ変わった今、ドドモンは恐らくそのドドモン本来の性格を取り戻したとも言えるだろう。
自分の知っているドルモンはきっと、過去に何かあってあんな性格になったのだろう。
思えば自分は、ドルモンやツカイモンの事を知っている様でまるで知らない。
知りたいと思った時にはもう既に遅く、ツカイモンもドルモンも現状通りである。
…ならば、せめて今から知っていきたい。

「…さ、トレイルモンの説得に行くか?」
「そうだな」

話の区切りがついた所で、輝一が声を掛ける。その声に輝二も頷いて立ち上がっていた。それに続き、子ども達も順番に立ち上がる。
結衣もまた立ち上がるが、歩き出そうとはしなかった。

『あの…ごめん、私残ってスワンモンの手伝いをしてても大丈夫かな?』
「まぁ!そんな、まだ手伝ってくださるのですか?」
「あぁ、いいぜ。俺たちもトレイルモン説得したらすぐに戻ってくるから」
『うん、行ってらっしゃい』
「!お、おう、行ってきます、」

残る事を口にすればスワンモンに喜ばれる。そしてその喜び様に拓也もまた結衣の申し出を飲み込んだ。
結衣もまたあのドドモンと仲良くしたいのだろう、拓也はそう捉えすんなり頷けば結衣にそう見送りの言葉を掛けられる。
分かりやすく反応を示す拓也に、その様子を後ろから見ていた子ども達はにまにまと揶揄う様に笑みを浮かべていたが結衣はそれに気づかず首を傾げるだけで悠太はそんな姉が恥ずかしいと言わんばかりに顔を俯かせた。





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