act.7 (7/7)


ダスクモンではなく、レーベモンというデジモンへと進化を成し遂げた輝一。
ダスクモンの様に凶々しいものではなく、まさに闇夜に紛れ獲物を追い詰めるライオン。夜の様に穏やかで静かに皆を包み込んでくれるような優しさもあった。

「何たること…!真の闇の力を目覚めさせてしまった…!」
「はぁぁぁ…!“エントリヒ・メテオール”!」

胸部の獅子から黄金のエネルギー波を放つ攻撃。その攻撃は真直ぐにケルビモンへと向かっていき命中。他のデジモン達の攻撃だった場合、ケルビモンは平然と食らっていたが、動揺と真の闇の力の影響により、攻撃を食らっては押されてしまう。
更にもう一発と、黄金のエネルギーをケルビモンへと浴びせてはケルビモンはまた苦し気な声を上げた。
ケルビモンに地面に膝を着けさせたレーベモン。彼は留めだ!と大きく飛躍し、ケルビモンへと襲い掛かる。

「“ライトニングスピア”!」

そうはさせまいと、自ら発生させた雷雨から雷を発生させ大きく走る雷を素手で掴み、その矛先をレーベモンへと向けた。
しかし、それに怯む事なくレーベモンは赤き閃光をバッグにデジコードに包まれる。

「レーベモン、スライドエボリューション!――カイザーレオモン!」

素早く獣型へと進化したカイザーレオモン。二本足で立っていた黒きライオンは、獣型では言葉通り、四足地面に着く漆黒の獅子と言うべきか。目の前まで迫っていた雷の刃を避けるのではなく、矛先へと噛み付けばそのまま顎に力を込め、噛み砕く。
それだけではなく、彼は噛み砕いた拍子にその雷の槍の上を駆けていき、飛び掛かった。

「“シュヴァルツ・ドンナー”!」

獣型になり技の力も強力な物となる。黒色の気弾はケルビモンへと命中し、更に連発して打ち込んでいき、地面に足を着けたカイザーレオモンはケルビモンに休む時間を与えずに、自分の体を守る鎧に埋め込まれた赤い球体が輝きだす。
やがてその光はカイザーレオモンの体に闇を生み出し、カイザーレオモンと似た様な獣が具現化。そのまま彼はケルビモンへと突っ込んでいった。

「“シュヴァルツ・ケーニッヒ”!」

ケルビモンの腹部を貫通し、断末魔と共にケルビモンの姿はデータが消滅したかの様に崩れ去っていく――

「やった…!」
「すげぇ、」
「…でも変だぜ?」
「何が?」
『…普通だったら、デジコードが出てくる筈じゃ、』

体の痺れも無くなり、輝一の戦いぶりに感心する中、倒されるケルビモンの姿に違和感を覚える。
そして、最後まで崩れ去るケルビモンにデジコードは現れず消えてしまった。
そこで考えられる答えは一つだろう。

「…あのケルビモンは偽物、」
「!俺たちが戦っていたのはケルビモン本体じゃなく、分身みたいな物だったのか」

結衣の手を握りながら、悠太がそう言葉にする。輝一もまたその事に気付き、目を見張る。
ケルビモンの分身と戦い、子ども達は誰一人として立ち上がれずに輝一のみで漸く倒せた相手。
ならば、本体の力はこの分身よりも遥かに上回るだろう。

「真の闇のスピリットが目覚めたとしても、まだまだ。実際に会うのが楽しみだ」

――薔薇の明星の下で待っているぞ

最初から子ども達は弄ばれていた。しかし、これで彼の戦い方に納得が出来る。通用しないとは分かっていたとは言え、彼もデジモン。攻撃を受ければそれなりに傷や焦げ目は付くはず。そして、仮にも自分達は伝説を受け継いだデジモンの力を借りて戦っていた。
それならそれ相応の対応をしてくる筈。それなのに、ケルビモンはそうはしなかった。
聞こえてくる声に、輝一は眉を寄せその薔薇の明星に向けて歩みを進めた。

「! おい、何の真似だ」
「俺一人でやる。キミたちは帰れ」

それを制止する輝二。肩に触れ彼の歩みを止めるが、輝一の意思はもう固くなっているらしい。ハッキリと帰る様に促した。
しかし、帰れと言われ素直に引き下がる輝二ではない。彼もまた断固として首を縦に振らなかった。

「お前だけを行かせてやれるか」
「彼奴を倒せるのは真の闇の力だけだ」
「そうじゃないだろ、闇は光があってからこそ闇。」

「悪いけど、俺も行くぜ。オファニモンを助けなきゃいけないんだ」
「僕も行くよ。苦労してゲームクリア寸前まできたのに、やめるなんてできないよ!」
「ったく困った奴らだなぁ。お前たちが行くんなら、俺も年長者として付いて行かないといけないなぁ!」
「もちろんあたし達も!ほら、女の子がいないと華が無いでしょう?ね、結衣」
『うん。みんなで倒しに行こう。輝一君に出来る事があるように、私たちにも出来る事はある筈だよ』
「…お姉ちゃんが行くなら、ボクも行く。一人だったら怖かったけど…皆と一緒ならきっと大丈夫だよね」

拓也に引き続き、自分達も行くと意思表示を見せる子ども達。彼らもまた意思は固い物だった。
そんな彼らの言葉を聞いて輝一は呆然と見つめ、輝二はやれやれとどこか呆れた様子で振り返る。

「じゃあ行くぞみんな!」

おう!と声を合わせ拳を挙げ、止まっていた足を進める。
目指すは薔薇の明星の真下。
そこで待ち受けるケルビモンを倒し、オファニモンを救う為に。

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