act.4 (4/7)


そして、次に映されたのは先程まで丸く美しかったデジタルワールドの変わり果てた姿。
虫食いの状態となってしまった、ある意味子ども達にとっては慣れしたんだ姿となってしまった。

「そして、これがデジタルワールドの現在…!」

様々な筒から映像が流れる、現在のデジタルワールドの様子。
数多くデータを奪われ、虫食い状態になるデジタルワールド。そして、尚も奪われていくデジコード。その吸収されていく先に、とある影が二つあった。
見るからにデジモンの姿を象っている姿。そのデジモン達が先程の山のデジコードも吸収していたと見える。

「アイツら…!」
「デジコードを吸い取ってる…!」
「山が、無くなっちゃう…!」
「…誰なんだアイツら」

映像はそのデジモンを影にしか映さず、正体は分からないまま。
バロモンもその姿を見ても影だけしか分からない様子で、小さく首を振っていた。

「分からん…しかし、ケルビモンの亡き後、デジタルワールドを消滅させているのは奴らだ。

もしこのままルーチェモンが、デジタルワールドの全てのデータを手に入れれば…ルーチェモンは復活してしまうのだぁぁぁ!」

バロモンの声と共に、子ども達は更にトンネルへと誘われる。
映像なんて物はないが、バロモンは子ども達に振り返った。

「予言する!」
「予言…?」
「――デジタルワールドの終末を…!!」
「終末…!?」

もう随分と聞きなれた予言という言葉。バロモンの額の石が強く輝き、あまりの眩しさに目は開けられずにいたが、確かにこの目でその映像を見てしまった。
核を中心にデジタルワールドの付近にあったあらゆる物が吸収され、そこには何も残らない、何も存在しない。
ただの無だけしかなくなってしまった。そんな光景――

「―お前たちは人間だ。今からでも遅くはない、人間界に戻るのだ…今すぐに!」

あまりの気迫に加え足場が元の入口付近の階段まで戻ると、動きを止める。子ども達は思わず足元から崩れるようにその足場へとしゃがみ込む。バロモンは強く子ども達に言い聞かせる様に言えば先に階段へと上り行く。
人間だからこの世界から離れろ。まるで、この世界とは無関係だろと言わんばかりの言い草である。
しかし、この世界を離れるには子ども達はもう、知り過ぎたのだ。

この世界がとても美しく、儚い、自分達と変わらず生活を送るデジモン達の姿を。
主の為に命を張るデジモン、子ども達の為に自分の命を投げ打ったデジモン、生きたいと叫ぶデジモン、子ども達に助けを求めるデジモン達。
そして、子ども達もまたこの世界に来て少しずつ変わっていった。この世界に来れなかったら、きっと変わる事なんて無かった関係、自分で見つけられた自分の良い所、認める事が出来た悪い所、そして仲間たちとの絆。
元の世界に帰るには、知り過ぎてしまった。
もう逸らす事なんて出来ない。消えていってしまったデジモン達、助けを請うデジモン達。
この世界を救う事で、この世界へ恩返しができる。

俯けていた顔を徐々に上げた。

「――俺たちは、帰らない…!」
「…なに?」
「今までは、オファニモンやセラフィモンの力を借りてここまで来た…!
――でも!これからは俺たちの力で、デジタルワールドを守らなきゃいけないんだ!」
「お、お前たち…!」

バロモンの足が止まる。
彼は予想していた。この世界の異常と恐ろしい予言を聞けば、子ども達は諦めて元の世界に戻るだろうと。予言しなくとも見えていたからこそ、いざ彼の言葉に思わず足を止めて振り返る。
予想と、現実とじゃ――全く違う反応を示したのだ。
動揺が顔に出てしまう。
彼らは一人ひとりその両の足でしっかりと立ち上がり、真直ぐに瞳の奥に僅かな希望を抱えながら此方を見ていた。
あの小さきデジモンですら、真直ぐな目である。

「そうだ、俺たちは伝説の十二闘士のスピリットを受け継いでいる!」
「あたし達の手で、ルーチェモンの復活を止めてみせるわ!」

子ども達に迷いの色は見られない。嘘偽りも無いだろう、しかしバロモンの脳裏に過るはやはりこの世界が無に還る場面とルーチェモンの復活の場面。
いくら伝説の闘士たちの意思を受け継いでいるとはいえ、この予言は未だに警告の様に流れている。この子ども達ではあの二人のデジモンには敵わないと物語っていた。

「無駄だ。予言は外れない――ルーチェモンは復活する!」

今までも予言が外れた事はない。だからこそ言い切れる言葉。バロモンの意思もまた固く、彼らを説得する。
それでも瞳の色は曇りなく、それ所か更に強まるのを感じた。

「だったら、倒すよ!」
『予言も、その先の出来事は映さなかった。それって、私たちにも倒せる希望がまだあるって事でしょ?』
「前の伝説の闘士が出来たんだ、ボクらだって出来る筈だよ!」
「そうだ、俺たちはやるしかないんだ!」

うん、と子ども達が頷く。その姿を見て、バロモンは目を見開いた。
確かに、ルーチェモンが復活した後の予言は無い。それは世界が滅んだから予言する必要が無いからである。
しかし――倒すとなったらどうなるのだろう。
ルーチェモンが復活した後は、世界はどうなるのか。バロモンは見ていない。
希望を願った先の世界か、絶望のみ待つ世界か。

「そう…俺たちは人間だ。でも、もう半分は…デジモンなんだ!だから――」

振り返る少年の瞳に、バロモン自身胸を打たれる。
自分よりも小さく、戦場に経験の浅い、歳も10数年しか生きていない、無力な人間に一瞬でも希望を抱いてしまったのだ。
認めよう。あの悪に染まった元三大天使であるケルビモンを倒した子ども達だ。
――しかし、ルーチェモンの強さは三大天使よりも上回る。
何故ならルーチェモンこそ、天使型デジモン達の頂点。ホーリーリングを四つ持ち、天使の翼も合わせて12枚持ち合わせる。
どんな究極体デジモンが何体掛かろうが、跪く程強い。

バロモンは小さく首を振った。

「――駄目だ。予言が…!もうデジタルワールドは崩壊するのだ!」

世界が滅べば取返しがつかない。倒す事も出来ない。バロモンは再度子ども達に背中を向けた。
その刹那、子ども達の背後から徐々に漏れていく光。
振り向けば徐々に迫ってくるデジコードの波。
そのデジコードの波の先に、あの二人のデジモンの影が見えた。これは、映像なのだろうか。それにしてはあまりにも現実味があった。

「あいつら…!」

突如、足元が揺れる。
「早く外へ!」バロモンの急かす声に、これは現実だと理解し子ども達の足は階段を上っていた。




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