act.2 (2/5)


カチン、カチン、カチン
そんな金属同士がぶつかって鳴り響くような音が、子ども達の笑い声と共に気付いたら聞こえていた。
ナノモンは自分で開けられないと分かった瞬間、どこからか取り出した金槌で叩き割ろうとしていた。絶体絶命の場面にも関わらず響くのは泉と友樹、結衣の笑い声。そして、純平もまた焦って何も知らないと主張する言葉しか出ないのだった。

「!…あれは、」

「本当に知らないんだ!拓也も輝二も俺達を置いて逃げたんだ!」
「嘘おっしゃい!」

どこからともなく聞こえるその音に釣られ、かなりの負傷を負っていた輝二がその場を目撃。
だが、それには気付かず二人は自分達を見捨てて逃げたのだと主張。だが、それを未だに信じないラーナモンは擽るのを止めない。
途中で合流したものの輝二は一瞬でその場の状況を理解し、デジヴァイスの場所も直ぐに特定する事が出来た。更にそのデジヴァイスのある場所も結界がある事も悟る。

あれを壊せばデジヴァイスは四人の元に戻る筈。だが、自分が今ここから飛び出し、更にこんな負傷を負ったまま飛び出していざ戦闘になった時、一人であの4闘士を何とか出来るのだろうか…
痛みに悲鳴を上げる身体に、輝二は僅かに顔を歪ませる。
もし、失敗して返り討ちに合って、自分もあそこに貼り付け…いや、もしかしたら自分の命すら危ういかもしれない。そうなってしまったら……下手をしたら、あの時のウィッチモンと同じ目に――…

「さぁ!仲間はどこに居るの!?」
「こっちが教えてもらいたいよ!」

「ッ!…もう少しの間頑張ってくれ…!」

悲鳴に近い三人の笑い声と純平の必死の抗議の声を、輝二は岩山に隠れたまま、せめて聞こえないように、タイミングを見極めようと耳を塞いだ。

場所は変わり、再び森の中。
拓也とも、結衣たちとも離れてしまったボコモンとネーモンは子ども達を捜す為に彷徨い歩いており、その途中に出会ったデジモンにより、何故か何をした訳でもないのに襲われていた。

「ま、待ってくれ!ワシ等はメルキューレモンとラーナモンの居場所を知りたいだけ!」
「そーそー敵じゃない」
「敵じゃないなら友達になってくれる?」

大きな仮面を付けた、猿のようなデジモンはセピックモン。
死者の魂だけが友達だと思っているデジモンであり、彼はボコモンとネーモンにその考えのまま友達になる事を条件として聞いていた。
だが、友だちになるという意味が食い違っている事に気付けなかったボコモンとネーモンは自分の命が恋しくうんうんと頷いてしまう。

「なるなる、なります〜」
「それじゃあ…」
「!?何で!?友達になるって言ったのに〜!」
「生きてる間に友情は生まれないよ?ほんとの友情は死んでから!」
「死にたくないんじゃあ!」
「“スピリットブーメラン”!」

そんな自分の意見を通そうとするセピックモンは、二人に向けて持っていた大きなブーメランを投げつける。子ども達の行方を知りたいだけだったのに構わず、こんな理不尽なデジモンに出会ってしまい、命を奪われてしまう。
ボコモンとネーモンはお互いに抱き着き、二人で死の恐怖を味わった。
だが…

「大丈夫か?」

そんな二人を救ったのは、アグニモン自身だった。
彼は二人に迫っていたブーメランを糸も簡単に受け止めれば、二人にそう尋ねる。
そんな彼に、ボコモンとネーモンは目を見開かせながらその存在を確かめた。

「皆は何処に居る?ダスクモンは?」
「そ、それが、メルキューレモンとラーナモンとパルグモンに捕まってしまったマキ!純平はんに泉はん、友樹はんに結衣はん…ダスクモンは知らないハラ」
「輝二は?」
「分かんない」

今ボコモンとネーモンが分かる事は、輝二以外の子ども達はメルキューレモン達に連れ去られたという事だけで、輝二の居場所が分からない。どうやらあの後、輝二は一人だけメルキューレモン達の手から逃れられたのだろう。

「やいお前!邪魔をするな!」
「それはこっちだって一緒だ!」
「え?何で?友情だよ?友情は死んでからなのに…どういう事?」

二人に話しを聞いていれば、不意に声をかけられるアグニモン。だが、アグニモンの言葉に訳が分からないと言うセピックモンの言葉に、アグニモンは不意に思い出す。
メルキューレモンに殺されたセラフィモンに、ソーサリモン。アルボルモンに殺されたピピスモン達。
そして、ダスクモンに無惨に殺されたウィッチモン。
死。一言に表すだけでも重い、重い言葉。
自分は自覚したのだ。死という物がどんな物なのか、どういう事なのか。二度と会えない。二度と、その人物、デジモンと笑い合えないのだと。
結衣の涙を見て、改めてそう思ったのだ。
胸が痛んだ。あの場で泣き叫びたかった。しかし、少し前の自分はその資格すらなかったのだ。

「俺達は仲間を助けなきゃいけないんだ!」

死んでしまってからでは遅い。
自分はまだ、結衣に何も伝えられていない。喧嘩したまま、終わりたくない。
もう二度と、あんな悲劇が生まれない為にも、自分は戦わなくてはいけない。

「生きてるのに仲間?生きてるのに仲間?生きてるのに…何故?何故?」
「勝手に一人で混乱してろ」

もはや説明する気も失せたのか、それとも説明する暇はないのか、アグニモンはそれだけ言うと、持っていたブーメランをセピックモンに返しては、ボコモン達と一緒に行動を共にしようとする。
そんな彼等の背を見て、セピックモンは自分が考えて考えて、出てきた疑問をアグニモンに投げつけた。

「生きていても友情は結べる物?」
「そうだ」
「そうか、だったら僕達も友達になれる?」
「もちろんさ」

セピックモンの問いかけに、アグニモンは肯定の言葉を送ってみれば、セピックモンは嬉しそうに両手を挙げて軽く跳ねあがる。その姿はまるで猿のように見え、更にセピックモンはアグニモン達に有能な情報をくれた。

「マイフレンズ、メルキューレモン達の居場所、教えてあげる」
「本当か?」

どうやらメルキューレモン達の居場所を知っているのは本当だったらしく、次にセピックモンは持っていたブーメランを今度はアグニモン達に向けてではなく全く別の方に向けて優しく投げる。
すると、ブーメランはセピックモンの所へ戻らず、宙に浮いてはそのまま尖っている方をまるで矢印の役目を果たしているようにその方向を指し示す。

「あのブーメランに付いてって!」
「分かった!ありがとう!」
「頑張ってー!マイフレンズ!」

きっと、このデジモンは友情をはき違えていただけで、ピピスモンと同じ、良いデジモンなのだろう。
アグニモン達はそのセピックモンの良心にお礼を言うと、すぐさまブーメランを追って走り出した。






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