act.1 (1/4)



「見えてきたぞ!次の大陸だー!」

ゆらゆらとトレイルモンの車内で揺られる中、拓也がそう叫んだ。その声に思わず子ども達は拓也と同じく窓を開けてその次の大陸とやらを見る。
そこにあったのは今まで見てきた大陸とは他違い、昼間だと言うのにその大陸は不気味な黒い雲で覆われ、言わずもがな何とも近付き難い大陸であった。

「昼間なのに、やたらと暗くない?」
『あそこに行くの…?』
「怖いのか?」
『ここここ怖くないよ!?』
「(声裏返ってるしどもってるしで…怖いんだな)」

もう見たくないと言わんばかりに目を逸らす結衣に拓也がそう問いかけてみれば、彼女は案の定怖がっているのだと察しがついた。
あの大陸は一体何なのか、友樹はボコモンに目を移した。

「ボコモン、あの大陸はどんな所なの?」
「んーあの大陸はー……っと、うわああ!?」

刹那、ボコモンの叫び声と共にトレイルモンが急ブレーキをかけて、急停止をする。
そのお蔭で車内に居た子ども達の体勢は崩れ座席から落ちてしまう。漸く止まった事により改めて座り直した。
一体トレイルモンはどうしたのだろうか、純平が急に停まるなと伝える。

「終点だよー」
「終点って…ここ駅じゃないわよ?」
「線路はまだ先に続いてるぞ?」
「だって行きたくないんだも〜ん。僕が終点って言ったら終点なんだーい」

なんて無茶苦茶な俺様ルール。あまりにも理不尽すぎる言葉に、純平が「我が儘言うな!」と喝破入れ、友樹もまたデジレールパスを持っていると訴える。
それでもトレイルモンはうんともすんとも言わず、溜め息を一息つくと、次に行動に出たのは座席の壁を開けて更に子ども達の乗っている座席を動かし、強制的に子ども達を地面に振り落した。
ウィッチモンはトレイルモンの意図が分かっていたのか即座にホウキを取り出しそのまま空へ飛んでいるが、それでも納得できないと言わんばかりの表情を浮かばせる。

「行きたきゃ勝手に行けばー」
『「「「「「うわああ!!」」」」」』
「っじゃあ頑張ってねー」

そしてそのままトレイルモンは前ではなく後ろの方へ走り去って行く。
子ども達はいきなりの捨身となったが故にそのトレイルモンを止める事が出来ず、その場で蹲る。

「まともなトレイルモンは居ないのかぁ?」
「トレイルモンにも、一応感情ってのはあるからね」
「皆大丈夫か?」

痛みはあるが、目立つ程でも騒ぐ程の痛みも怪我もしていない。輝二もらしくなく、腹が立っているようなそんな表情をしている。
拓也が皆の無事を確認し、一匹だけ立ち尽くすボコモンに目をやった。

「ダークゲート…間違いない。これはダークゲート…闇の大陸への入り口じゃ…!」

珍しく真剣な眼差しで、いつもより落ち着いた声色でそのダークゲートとやらがある大陸を見つめるボコモン。そんな彼が珍しく、子ども達は思わずボコモンの見据える方へと目線をやった。
遠目であまりハッキリはしないが、そこには確かに門のような物が佇んでおり、その門の所には闇”と書かれた恐らく古代文字であろう物が刻まれていた。

『ダーク、ゲート…』
「闇の大陸?」
「どんな所なのか、何がいるのか全く分からない。暗闇のように不気味で謎だらけ、じゃから昔からそう呼ばれておるんじゃ…」
「まあ噂ってだけで真実は誰も知らないみたいなのよ」
「その本に書いてないのかよ?」

ウィッチモンも知らないとなると、頼りになるのはボコモンがいつも大切そうに持っている本。それなら詳しい事も書いてあるのではないか、と考えた純平がそう問いかける。それを聞いてボコモンは、闇の大陸のページがあるにはあると言う。
だが、そう言葉を繋げようとした時、言葉よりも実際に見た方が良いとボコモンも思ったのだろう。腹巻からあの本を取り出しては、その闇の大陸のページを開いて見せた。

「げぇっ!真っ黒!」
「何で?」
「分からん…闇の大陸の情報は何一つない。
調べに入ったデジモンもおった。じゃが、それきり二度と戻って来なかったらしい」

その大陸に入ったデジモン達は、二度と戻って来られない。それがもし本当なら、自分達は一体この大陸に入ったらどうなってしまうのだろうか。ちょっとした怖い話に不安そうに顔を見合わせる泉に結衣、友樹。

「じゃから闇の大陸は避けて行った方がいい。薔薇の明星へは回り道をして――」
「でも、この大陸を真っ直ぐ行った方が絶対に近いぜ?」
「……でぇっ!?」

回り道をした方が良いと言うボコモンの意見を聞かず、拓也はこの道を通った方が良いと真逆の意見を出してきた。この話しを聞けば回り道をしてくれるだろう、という思考になっていたボコモンは声を荒げるしかなかった。

「だよなぁ」
「じゃが、」
「今まで色んな事があったけど、その度に皆で力を合わせて乗り越えてきたじゃないか!」
「なんかあったら進化すれば良いだろ?」
「そうだよね、進化すれば」
「伝説の闘士が6人揃ってるんだもの!何が来ても、大丈夫よねっ」
『うん…それに、どんな所なのか、何がいるのか、本の情報より自分の目で確かめた方が良いと思うよ』

ね?と、先程まで震えていた結衣でさえも、こんな笑みを浮かばせている。ただの説得させるような言葉だけではない。子ども達は自らその先にある未来を見据えている。
謎だらけの大陸に自ら、飛び込もうとしているのだ。

「決まりだなっ」
「お、おいぃ―」
「しゅっぱーつ!」

ボコモンの有無を聞かずに、拓也は拳を突き上げてそのまま歩き進む。それに続いて後の子ども達も止めていた足を動かした。そんな子ども達を見てボコモンは制止の声を掛けるが、それでも子ども達の足は止められない。
挙句の果てにはネーモンまでもがボコモンを置いて子ども達に付いて行こうと進みだした。取り残されたボコモン。
だが、一人でいるよりやはり子ども達と一緒に付いて行きたかったのか、「ワシをおいてくなー!」と結局は付いてくるのであった。

何も知らないまま、子ども達は何かを知る為に、薔薇の明星へと一刻も早く着く為に、闇の大陸へと子ども達は足を踏み出していった。






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