act.4 (4/6)


――パシンッ!

随分と今の戦闘場には不釣り合いな乾いた音が海に響いた。
そちらの方へ視線を向けてみれば水色の肌をしていた彼女の頬は目の色と同じような赤がじんわりと浮かび上がり、その彼女はあまりの事に海の中へと落ちそうになる。
その様を何を言う訳でもなく、黙って睨みつけるは皆が可愛いと口にするうさぎの戦士であった。

「な…何すんのよ!アイドルのあたしの顔に傷が付いたらどうしてくれんのよ!」
『友達が…友達が傷付いたらどうしてくれんの!!』
「な、何よ…!このォ!!」

引き下がらないロビスモンの強気な態度といきなり殴られた事に気に入らなかったのか、ラーナモンは直ぐに立ち直り海の水柱を鋭くしてロビスモンに攻撃を仕掛ける。
泉を渦の中に落とされ頭に血がのぼっていたロビスモンだったが、あくまでまだ冷静を保っていたらしく、直ぐに避けては自身の技である弓矢を放ち水柱を打ち消した。

「“レインストリーム”!!」
『ッな!?』

攻撃は防げた、だがラーナモンは次の攻撃まで仕掛けていたらしく気付けばロビスモンの頭上にはフェアリモンを海の中に落とした原因である技を繰り出す。その雨に打たれてしまったロビスモンは防御をするのが遅れてしまい、フェアリモンの様に落ちてしまう。

「ロビスモン!」

しかし幸いにもロビスモンの落ちてきた所は拓也達の乗っているイカダの上だったらしく、子ども達は大丈夫なのか、と心配そうに覗き込む。フェアリモンとは違い表情が直ぐに分かるロビスモン。体中にある怪我も目立つ。だが、そんな心配は彼女にとっては要らない物だった。
直ぐに目を開けたロビスモンは目の前に立つ子ども達を見ると口を開く。

『みんな邪魔!早く退いて!』
「「「は、はい、すみません…」」」

自分の視界に入ってくる子ども達。動くには子ども達が邪魔になってしまい、ロビスモンは頭に血が上ったまま強気な言葉を言い放つ。そんな彼女に怯んだ子ども達は直ぐに離れ彼女はそれを確認するなり直ぐにラーナモンの方へと飛び立つ。

「中々ってとこね、でもこれでお終いよ!!」

ラーナモンは彼女に攻撃はさせまいと、ロビスモンの周りに四つの水柱を立てる。それは以前戦った時、水の柱に閉じ込める技。空に向かって飛んでも、柱の間を使って逃げようとするも柱が邪魔になってしまい、更に水の柱はロビスモンとの距離を縮める。これでは弓矢すら打てなくなってしまった。
これが籠の中の鳥ならぬ、檻の中のウサギ。身動きがとれなくなったロビスモンにラーナモンは留めの攻撃を仕掛けた。

「“ジェラシーレイン”!!」
『ッ!――うあああああ!!』

ラーナモンの生み出す黒い霧がゆっくりとロビスモンに襲い掛かる。普通の霧ではない、と見て分かるそれにロビスモンは逃げようとするも柱とロビスモンの距離が近すぎて避けきれない。
やがてその霧がロビスモンを包み込んだ時、嗅いだ事のない酷い匂いと、じわじわと身に付けている物が解けていく感覚、そして露出されていた肌には焼け付くような熱い痛みが体中を襲った。
やがて痛みに耐え切れなくなったロビスモンはデジコードを身に纏いついに結衣へと戻ってしまう。更に周りにあった水の柱が彼女を飲み込んでいきそのまま海へと落ちていった。

「結衣!!」
「大丈夫だゴマ!」
「ゴマモン!」

また仲間の一人が海の中へ落ちてしまったと、思われた時海の中で助けに入っていたゴマモンが結衣を担いで頭をだした。それを見て安堵の息を吐くと彼女をイカダに乗せようと一同が結衣を引っ張り上げる。

『ぅ…、』
「大丈夫か?結衣…」
『拓也…大丈夫、だけど、』
「フンッ、口ほどにも無いわね!ロビスモンって!」
『ッ!』

はたまたラーナモンの挑発と小馬鹿にしたような態度。それを聞いてか結衣は再び立ち上がるとデジヴァイスを構える。また進化をしてラーナモンに勝負を仕掛けるつもりなのか、だがそれを輝二が腕を掴んだ事により阻止される。

「無茶だ!またやられてしまうぞ!」
『でも…!』
「様子を見るんだ」
『…っ、』

進化しないの?とラーナモンの挑戦的余裕の笑みに子ども達は渋い顔をする。絶体絶命的な絶望的な状態となってしまった子ども達。海に落ちた泉も助けてやりたいのに目の前のラーナモンがさせてはくれない。
もうダメなのか、と思われたその時――

「あ、見て!渦が!」

友樹の声により、皆の視線が渦に移される。その渦は、泉が先程落とされた渦であり、その渦はやがて渦を巻くのを止めると、他の渦も巻くのを止めて、先程までの渦は何だったのかと聞きたいくらいに静かになっていた。
そして、再び水柱が立つ。驚いているラーナモン、あの水柱はラーナモンではない。海の中で起こった渦巻いた風が起こしたのだ。それは、水の柱から現れた泉が証拠――

『泉…!』
「見つけたわ…あたしの、ビーストスピリット!!」

泉のデジヴァイスの画面に、“風”という文字が浮かんだ。

「スピリットエボリューション!!
――シューツモン!」

それは、風の妖精から、この大空を飛び渡る古代の鳥のようなデジモンだった――…






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