:ニコラ/ノエル

「マスターの手って、ふわふわしててあったかいね」
「そう?」
「ぼくらの傷を治していくの、すごいと思うよ。ねえ、ノエル」
「うん、すごいよ、マスター」
「そりゃどーも」




:ケンタッキー

「い……っ」
「ごめんな、ちょっと我慢して」
「このくらいなら、大丈夫っスよ」
「このくらいなら簡単に治せるから大丈夫」
「……すんません……」
「なんで謝んのさー、別にいいって。これが仕事だし。あ、でもあんま怪我するのは心配するからやめてほしいな」
「……マスターは」
「ん?」
「あー……いえ、なんでもないっス。ありがとうございました」
「ん」




:エカチェリーナ

「ますたーは神様、というものを信じているのですか?」
「どしたの、急に」
「いいえ? べつに深い意味はありませんよー。でも、ますたーの手をぼくは好きだという話ですよ」
「そんなに好かれるようなものでもないと思うけど」
「あら。すくなくとも、ぼくには好かれていますよ?」
「そう、それはよかった」




:カトラリー

「お前、そうやってちょいちょい顔に怪我するのやめろよな。心臓に悪い」
「……ごめん」
「いいか? 君の顔は宝。宝なのだよ」
「いや……それはちょっと意味わかんない」
「とにかく、だ。治すのが難しいからあんま怪我しないでくれってこと」
「わかった」
「君、上出来だなあ」




:スナイダー

「おい」
「なん、うっわえぐい」
「さっさと治せ」
「いいけど。ていうかお前その怪我でよく立ってられるな」
「慣れた」
「慣れてもらっちゃ困るんですけどねー! 限界値っていうのを学んでくれよ」
「面倒だな」
「人間の身体は、そういうふうに出来てしまってるからな」
「……別に、俺たちの身体までこうしなくてもいいだろう。俺たちはおまえとは違う」
「それはそうだけど、見た目が人だし」
「面倒なことをしてくれたな、マスター?」
「ええ……こっちのせいかよ……」




:マルガリータ

「マスター!」
「う、わ。なに、危ないでしょうが」
「ごめんね! そんなことよりマスター! お祝いしよ!」
「今日は別になにもありませーん」
「じゃあマスターの誕生日を今日にしよう?」
「勝手に誕生日を増やすなって」
「ていうか、人間は毎日生まれてるんだから今日だって誰かの誕生日じゃん? じゃあその誰かのために祝おうよー!」
「なに、その考え。きみそういうとこあるよなー」




:シャルル

「あ、マスター、」
「うん?」
「血、滲んでるよ」
「え? ああ、ほんとだ」
「包帯巻き直してあげる。こっちきて」
「いいよ、後で自分でやるから」
「そんなこと言ってたら絶対やらないって知ってるから。とっとと衛生室行くよ」
「お前、ちょっとずつ容赦がなくなってきたな……」
「マスターが放置するのが悪いんでしょ? 君は人間なんだから」
「はーい」




:ベス

「別にさあ、神様なわけねえじゃん、な」
「ああ、そうだな」
「君は優しいな」
「……マスター、」
「なあに、どした」
「その、マスターは、ちゃんと人間だと俺は思う」
「……そう、ありがと」