心拍数#0822

窓の向こうの世界が今日も眩しい。

「ゆうくん、点滴打つね?」

「あ、はい。お願いします」
 
ここは病院。物心ついた時からここが僕の家だ。ずっと、ずっと。
やることと言ったら、食事、点滴、検査、病院内を母さんと散歩、勉強、読書くらいだろうか。

僕の病室の窓からは『学校』から帰ってくる人達が見える。
・・・・・・・・・・・僕も『学校』に行ってみたかった。

行ってみたかったんだ。

やりたいことだって、たくさんあったのに。

***

今日、余命宣告をされた。僕の心臓は2ヶ月後には、止まる。
やり残したことばっかの僕の人生にやっと幕が降りる。

いつかは死んでしまうなんてこと分かっていた。
死にたくない、と思うよりも先に、いまさら余命宣告か、と思ってしまったのは仕方ない。
僕の病気は絶対、絶対絶対絶対に治ることのない病気なんだ・・・・・・・・・・絶対。

もうこの病院にずっと縛り付けられなくなるんだ、と考えると、もう来世が楽しみで仕方ない。

母さんはよく泣くけど、僕はもう死にたい。明日に何が起きたってもう死んじゃう僕には関係ないもの。

生きる意味なんてないし、父さんが僕が生まれる前に死んじゃったし、お金も大変だと思う。
だから、いままで迷惑かけた母さんに早く僕という重荷をほどいてもらいたいんだ。

***

「はい、点滴終わったよ。」

「ありがとうございます。」

「ゆうくん、知ってる?ゆうくんの隣の部屋に同い年の女の子が来たよ」

「は、はぁ。」

「つれないなあ。その子、昨日の雨の中で自転車乗ってたら、滑って転んじゃったって。
 頭とか打ったらしくて、全治2ヶ月よ!・・・聞いてる?」

「・・・・・こんな個人情報みたいなの勝手に僕に話しちゃっていいんですか?」

「(((°д°)))・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・じゃあ、ゆうくん、点滴お疲れ様ね。」

やっぱりあの看護師Aさんはおしゃべりだ。この前だって同僚の彼氏の秘密とかペラペラ喋ってたし。

・・・・・・・・全治2ヶ月・・・・・・・・・・・・・・・。僕の人生が終わった頃に、その子はもとの生活に戻ってくのか。


***

「こ、こんにちは・・・!私、りのだよ!あなたと同い年だって看護師さんから聞いたから少し顔出してみようと思ってそれでね!たまにおしゃべりしたいな〜・・・って・・・・・・・・・・・・・・い、いきなりごめんなさい・・・・あのっそのっ気、使わなくっていいからね、あ、わ、私のことはりのって呼び捨てでよんでほしい・・・・な・・・っいまハマってることは・・・・・・日記書く事かな・・・よ!よろしくっ・・・・・・お願いしますです・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えと、か、顔あげなよ?」

「う、うん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え。」

「え?」

「あれ?」

「ん?」

「・・・・・・ゆうちゃんさん?」

「ま、まあ一応そうだけど・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっと、か、髪短いね」

「そうだね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・そのもしかしてもしかすると・・・男の子ですか?

「え?」

「男の子だよね・・・?」

「もちろん。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘でしょ、男の子と喋っちゃった・・・・・・・!」

「・・・・・・・僕が女子じゃなくってごめんね・・・?」

「私、実は・・・・・・・・・・・・・男性恐怖症なんだ。だからっお、おおおお男の子と喋ってるなて、すっごい、びっくり。」

「そうなんだ。」

「これからもたくさん遊びに来てもいい・・・・・・・・・・?」

「いいよ。」

「ありがとう!じゃあ・・・私、このあと検査あるから・・・・・明日までさようなら・・・・・・・?」

「うん、ばいばい」

「!!ば、ばいばいっ」

・・・・・・・・・・・・・・う、うおおおおぉぉぉぉ

うえっぼっ僕・・・!今、じょ、じょじょじょ女子と喋ったの?!えぇぇぇぇえぇぇぇぇえええぇえぇえ

うわあ、え、ちょ、うわあ

りの・・・・・・・りのっていうんだ、へえ。


 8/22 りのが病室に来た。りのは男性恐怖症ってやつらしい。
     明日も会いに来てくれる。楽しみ。
     初めてできた友達。
                                     』

お母さんがずっと前に買ってくれたノートの1ページ目に書いてみた。むずがゆい。胸がぐぐっってなる。・・・・・おかしい。

あ、勝手に友達って呼んでもいいんのかな?ま、まだ知り合い程度だよね、多分・・・・・・・・・・


 8/22 りのが病室に来た。りのは男性恐怖症ってやつらしい。
     明日も会いに来てくれる。楽しみ。
     初めてできた友達。
                                     』

明日楽しみだ。

***

それから僕たちは一緒に過ごせる時間の大半をともに過ごした。
りのに出会った次の日から、毎日りのは自分の食事を持って僕の病室に来てくれた。
・・・病院の食事はまずいらしい。

僕は病院以外の場所でご飯を食べたことをあまりにも昔で忘れてしまったから、ちょっと衝撃だった。
医者に内緒でりのの弁当も食べた。最高に、最高に、おいしかった。

りののおかげで、僕の心臓が止まる頃には、きっとこの世を満喫し終わっていると思うんだ。

やり残したことなんにもないくらい、りのの隣で笑い続けていたいと思えるようになったんだ。

生きる意味も見つけた。この胸が脈打つうちはりのをまだ守っていたいんだ。 それでいいんだ、いいんだ。
こんな病気な僕にりののためにできることは少ないけど、悩みの相談とか、そんな些細なことをもっとやってあげたい。

いろんな話をたくさんして、一緒に同じ涙を数えて、僕らはまたお互いを知っていったんだ。

昨日、りのに車いすを押してもらって、病院の屋上を散歩した。


初めて、君を抱きしめた。

確かに、君のぬくもりを感じた。


どきどきと、りのといるだけで1分間に110回も高鳴る鼓動。

高鳴る鼓動が伝えてく。重なる僕とりのの心臓の音と流れる大好きだって想いを。
もう離さない、僕の心臓が止まってしまってもずっとそばにいる、と約束しよう。そして愛し続ける、と約束しよう。
いつでもりのが寂しくないように、ずっと、ずっと。

僕が余命宣告を受けたすぐあと・・・・・・・・・そこでりのに出会えたことに何か理由があるとするならば、
運命かは分からなくても、嬉しいことに変わりはないよね。少なくとも僕はすごく嬉しい。初めて生きたい、と思った。

あと少しで僕は僕をやめる。 その間であと何度「好き」って気持ちをを伝えられるかな。


ただ生きていることにありがとう。
ただ生きられてきたことにありがとう。






ただ君に逢えたことに、ありがとう。









 8/22 りのが病室に来た。りのは男性恐怖症ってやつらしい。
     明日も会いに来てくれる。楽しみ。
     初めてできた友達。
     初めてできた僕の恋人。

 10/22 りの、ありがとう。

                                     』


***END





こんにちは!

この曲は蝶々Pさんが彼女に捧げたラブソングで死ネタとかじゃないんですけど、私の勝手でこんなのになりました←

文章とかへったくそやろーで読んでて飽きると思うけど、よろしくお願いします(^ω^)

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