今日は俺の誕生日である。
学校やけど。つか誕生日に学校とかなんでやねんふざけんな。誕生日くらい休んでもええやろ、くそう。
でもやっぱり誕生日やし、別に浮かれとるわけちゃうけどなんか気分がいい。
ただひとつ俺をすっきりさせへんのが、テニス部のあのアホらからなんの一言もないことで。
いつも散々うっといのに、他の奴等の誕生日にはめっちゃ騒ぐのに、俺の時だけ音沙汰なしってなんやねん!
めっさ腹たってしゃーない。
別にええけど。あんな先輩らに祝って貰わへんでも別にええけど。
とか考えながら授業受けとったらもう昼休みになってもうた。
―ピッ…はいどーもー!浪速のスピードスターこと引いたり押したり謙也ですー!―
…始まった。あのひよこ頭の放送や。毎週火曜と水曜は謙也さんがDJでお昼の放送をやるらしい。毎回消しゴムの話とイグアナの話としまいにゃ似たようなラップの曲ばっか流すっちゅーダサすぎてつまらなすぎる放送。ほんまにやめてほしい。
声でかいし。
ボリュームのツマミ切ったろうか…
―よっしゃ今日はゲストを迎えとんでー!紹介しますバイブル白石蔵ノ介!―
―みんな楽しく昼飯食っとるか?今日はエクスタシーなラジオ届けんで!よろしゅう―
…うーわ。部長がゲストとかもうほんまに聞いてられん。絶頂まつりやん。ありえへんほんま聞きたないありえへん。
しかも部長が出てきたことによって俺のクラスの女子の悲鳴がはんぱない。
あほ2人がかましつづけるトークを白けつつも聞いてやる俺。優しすぎやろ、泣ける。
―ところで白石さん―
―はいはい謙也さん―
―今日はなんか言いたいことがあるそうで―
―あ、せやねん!―
―さあじゃあここで言ってもらいましょうか白石さん!―
―お、聞いてくれますか謙也さん!―
―もちろんです白石さん!―
―今日はですね、俺ら四天宝寺中テニス部の一大イベントがありまして―
―おっ、それはもしかして…?―
まさか。
―そう!今日は可愛い可愛い後輩―
―財前くんの…?―
まさかまさかまさか。
―誕生日でーす!!!!!フー!!!!!―
―フー!財前フー!―
―今日で14歳や財前ー!―
―大人の階段上ったな財前!んーっ、エクスタシーー!!!!!―
―「「おめでとさーん!!!!!!」」―
…ふざけんな。え、なんやこれめっちゃ羞恥プレイやんいやがらせやんさいあくや。
ほらクラスのやつらめちゃめちゃ見てくるやん、はずいほんまはずいありえへん!
―さあさあクラスのみなさん財前を祝ってやったってください!―
―ちなみに財前は善哉がすきやで!―
―俺はチーズリゾットがすきやで!―
―俺は青汁がすきやで!―
―「「よろしゅー!」」―
自分のすきなもん言ってどないすんねんあほか。
―あ、ちゅうか白石さん!―
―なんですか謙也さん!―
―財前聞いとんのかな、これ―
聞いとるわ消したいわぼけ。
―どやろ、サプライズやったからなあ、財前聞いとるか?―
―聞いてへんかったら明日もやろか!―
―それエクスタシーやな!よっしゃ明日もやったるでー―
冗談にも程がある、笑えへん、笑えへんでそれは。
―ということで白石さん!―
―なんですか謙也さん!―
―お時間が来てしまいました!―
―わ、ほんまか残念やわあ…―
―ですが…?―
―おん?ですが…?―
―今から財前くんのクラスに行って直接取材しようと思います!―
…は?
―フー!!!!―
―ほな財前待っとけよ!―
―それでは昼の放送は終わりにしますお相手はわたくしバイブルこと白石蔵ノ介と―
―浪速のスピードスターこと忍足謙也でお送りしました!―
―「「ほな!」」―
やばいやばいやばいやばいやばい、来る、絶対くる5秒いないにあの金髪ヒヨコが絶頂聖書つれてやってくる逃げれないやばい。
公開処刑フラグや…
ありえへんほんまに。いやがらせにもほどがあるやろ。
「「ざーいーぜええええん!!!」」
振り替えるとめちゃめちゃでかい善哉持った笑顔の謙也さんと部長がおって。気づいたらほもカップルも師範も巨人も副部長もゴンタクレもおって。みんな俺に笑顔で手なんか振って。
恥ずかしすぎやろあの人ら。ほんまに先輩かっちゅーねん。
「聞いとった?なあ財前聞いとった?」
「びっくりしたやろ!俺と白石で考えてん!」
「あほか。どんな後輩いじめやねん」
でもまあ、
「おおきに」
この人らにあんな笑顔で祝ってもらえるならこれもええかな、と柄にもなく思ってしまったから、
これぐらい言ったってもええか。