other | ナノ





2009
11/9 月



「はい。今日からまたまた2年F組に新しい仲間が加わります」


もう4人目よ、なんて先生が楽しそうに話す。
今日はなんだか機嫌がいいようだ。

僕も中学に入る時、この街に来た。
幼い頃に両親を亡くし、今まで1人で生きてきた僕はこの場に来たと同じ頃、不思議な力を得たんだ。
ペルソナ。自らの分身のようなその存在は、今の自分には必要な力なんだとわかるが昔の僕には理解出来なかっただろう。


「望月綾時って言います」


1人思い出に浸っていれば、転校生である望月が周りの女子たちに笑顔を振り撒いていた。
また変な奴が来たな……。


「結構よくない?」

「アタシもそう思ったー」


どうやら女子からは好印象なようだ。
まぁ別に、今までの日常が変わらないのであれば別に……、


「……湊?」


隣へと視線をずらせば、そこには幸せそうな寝顔を浮かべる湊の姿。
なんか夢でもみてるのかね。





翌日。


「ぜんたーいとまれっ!」


なにやら廊下が騒がしい。
だっだっ、と言う足音で目が覚めた僕は、むくりと上半身を起こす。


「全力をあげて我がクラスの転校生ズを調査いたします!」


なんだ、じゃあ僕は関係な……くないけどいいや、寝直そう。
そう頭の中で整理すると、再び机に突っ伏した。


「と言うワケで! 岳羽ゆかりさんに直撃取材です!」


マイクを持った女子生徒がゆかりの元へと近付いていく。
ゆかりは戸惑いつつも、彼女の質問を受け入れた。


「有里湊くんについてお聞きしたいのですが……!」


「えっ、うーん……。有里くん……ねぇ……」





その7ヶ月前。
4/6 月



プシュっと音を鳴らしながらモノレールの扉が開き、そこから1人の青年が降りて来る。


「ふぅ……」


改札口を通り、駅の入り口を抜けようとした途端、目の前が真っ暗に染まった。


「バッテリーも切れた?」


駅の電車時刻表や改札機、愛用の音楽プレイヤー、身の周り全ての機器が停電でも起きたかのように止まる。
不思議に思いながらも時刻が時刻な為、目的地へと先を急いだ。





「ここか」


駅から少し歩いた場所にある、学生寮。
その前に着いた有里湊は、大分変わってしまった景色に少しの虚しさを感じていた。


「遅かったね」


「長い間、君を待っていたよ」


玄関を開けると、目の前には自分より明らかに年下であろう少年が。
返事をする間もなく、少年は話を進める。


「この先へ進むなら、そこに署名を」


「一応契約だからね。怖がらなくていいよ」


よく状況が把握出来ていないが、取り敢えず名前を書かなければ話は進まないらしい。
渋々ペンを取り、名前を記入した。


「ここからは自分の決めたことに責任をとってもらうって言う、当たり前の内容だから」


「確かに時は全ての物に結末を運んでくる。たとえ目と耳を塞いでいてもね」



   「さぁ、はじまるよ」



そう言葉を残し、少年は消えた。
暗闇に1人、状況把握がきちんと出来ていないのに取り残されてしまった。


「誰!?」


ガタン、と音がしたと思えば、再び人の声がする。
咄嗟に身構えるように、両足に力を入れた。





L'arrlvee.
転校生
×