悪虐皇帝に逆らえない


※シンデレキのネタバレ有り。やりたい放題です。
※洗脳、快楽支配を匂わせる要素があります。閲覧注意です。
※演出上、一部の台詞にマークがあります。苦手な方は読まずにブラウザバックすることをお勧めします。



 むかしむかし。ある国にとても悪い皇帝がいました。
 危険なスケートボーディングのレースである"S"を至るところで開催し、その開催に国民から徴収した高い税金を使い込んだり、家臣に首輪をつけて犬扱いしたり、贅沢三昧で悪いことをたくさんしていました。その皇帝はいつしか悪虐皇帝・愛抱夢と呼ばれるようになりました。

「愛抱夢、あなたを国外追放の刑に処します。」

 やがて数々の悪虐を見かねた王妃様、名前が権力を使い、夫である皇帝の愛抱夢を国外追放しました。
 彼女は英雄扱いされました。そして虐げられていた国民から絶大な支持をされ、名前が女帝として即位したことで国には平和が戻りました。
 "S"は名前の改革により安全を考慮した国民的なスポーツとなり、全国民の約9割が滑れるまでにスケートボードは普及しました。今では誰もが年齢や身分など関係なく、街中でスケートボードを楽しんでいました。
 ある日、この国の最高権力者である名前はランガ王子を国賓として歓迎することを仕える者へ告げました。

「侍従長よ。雪の国から、私の遠縁の王族であるランガ王子が来国する。国賓として手厚くもてなすように。」
「かしこまりました、陛下。」

 侍従長のスネークこと忠が一礼しました。彼はかつて愛抱夢の側近でしたが、首輪をつけられて『犬』呼びされた挙句、ひどい扱いを受けていました。人権を取り戻した彼にとって女帝の命令は至上であり、絶対のものでした。
 名前は国のトップとして"S"の開催宣言をしました。

「此度はこのクレイジーロック城で開催する"S"にて、ランガ王子の結婚相手を探すこととする。国民の女性たちに招待状を送り、今ここに"S"の開催を宣言する。」

 かくして国の力を結集させたイベント、"S"がランガ王子のために開催されることになりました。



 名前はバルコニーから、ランガ王子たちの滑りを眺めていました。結婚相手を決める"S"は終了し、ランガ王子はとうとう運命の相手を見つけたのです。彼は赤毛の娘、シンデレキと楽しそうにガラスのスケボーで氷の道を滑っていました。

「懐かしいですね。彼らを見ていると、かつての愛之介様と名前様を思い出します。」

 侍従長の忠は名前の後ろに控えたまま、感慨深く呟きました。

「それは……、もうかなり昔のことに思える。」

 名前はすこし表情を翳らせました。かつて彼女がこの国の王妃となったばかりの頃、夫である皇帝の愛之介とは相愛であり、それはもう仲睦まじかったのです。愛之介は賢君であると人々に愛され、名前はそんな夫を支えて政務に励むのが何よりの喜びでした。

「あの日、もしあの人が病で倒れなかったら、どんなに良かったことか……、」
「名前様、」
「……いえ、仮定の話はやめましょう。もう悔やんでも戻って来ないのだから。」

 名前はあの運命の日を苦々しく追懐しました。
 国を平和に治めていたある日、当時の皇帝だった愛之介は政務の最中に倒れてしまいました。数日前、先代皇帝に大切にしていたスケートボードを燃やされてしまったこと、侍従長の忠がそれを止めなかったこと。それらが深い心労となったに違いありませんでした。
 三日三晩、愛之介は高熱に苦しみました。その騒ぎを聞いた国民たちは敬愛する皇帝のために毎晩、広場で快癒を祈りました。名前も夫の快復を、国民と一緒に心から祈っていました。
 その願いが通じたのか、愛之介は以前のような健康を取り戻しました。しかし、不幸なことにその日から彼の暴政が始まったのです。
 
『名前、僕たちは今までこの国のために尽くしてきた。だから今度は国民どもが、いや愚民どもが僕たちに奉仕し、平伏すべきだ。そうだろう?』

 愛之介は傲慢な圧政を開始しました。国民から高い税を徴収し、自身は城で今まで以上に贅沢三昧な日々を送るようになったのです。酒池肉林の贅を極め、王妃の名前に毎夜、淫奔の限りを尽くしました。彼は『愛抱夢』を自称し、いつしか悪虐皇帝・愛抱夢と呼ばれる最悪の暴君になってしまったのです。
 女帝の名前は暗い回想を終え、眼前の幸福の象徴のような滑りをするランガ王子とシンデレキを見つめました。今の自分が失ってしまった、眩しく尊いものを見るまなざしでした。

「侍従長よ、私はランガ王子とシンデレキには幸せになってほしい。そなたはどう思う?」

 侍従長の忠がそれに優しく答えようとした瞬間、一陣の暴風が吹き荒れました。氷の道は砕け、華美なベネチアンマスクをまとった人物が突如現れたのです。

「幸せになどさせないよ。さあ、犬!名前とランガ王子を連れて来い。」

 なんということでしょう。追放されたはずの先代皇帝、愛抱夢が現れたのです。彼は侍従長の忠へと傲岸に命令し、首輪をちらつかせました。愛抱夢は強力な催眠魔法の使い手であり、言葉により人を洗脳することができるのです。
 犬扱いされた隷従の日々は身体にしっかり刻み込まれているらしく、忠は膝をついてしまいました。名前は必死に叱咤します。

「侍従長!自我を保ちなさい!」
「くっ、……名前様、申し訳ありません……、」
「犬、さっさとしろ。首輪ならここにあるぞ?」
「わんっ!」

 理性の色が浅緑の目から完全に消失し、忠は主人の命令に忠実な犬と化してしまいました。犬らしく吠えた後は恐るべき膂力で名前とランガ王子を攫い、愛抱夢のもとへと駆け寄りました。

「名前、久しぶりだな。元気そうで何よりだよ。」
「愛抱夢……あなた、なんてことを……!」

 愛抱夢こと愛之介は名前の頬を愛おしそうに撫ぜました。その触れ方には、妻への慈愛がたっぷり込められています。名前は困惑しました。彼のそれは国外追放し、皇帝の座を奪った者に対する態度ではなかったからです。

「君に追放されてから一カ月もの間、とても寂しかったよ。また皇帝の座に返り咲きたいな。」
「そんなことは許されない。この国の民は悪虐の限りを尽くしたあなたを支持しないに決まって、」
「……名前。君は誰のものかな?」

 愛之介はそっと甘やかに囁きました。強烈な催眠魔法が言葉に宿り、精神を甘く侵蝕していきます。名前は必死で抗いましたが、とうとう心身が従服してしまいました。

「あ……いや……だめ、もう……っ、」
「さあ、今一度聞こう。君は誰のものかな?」
「わ、私は……っ、夫である愛之介さまのものです、」
「いい子だ。夫婦として愛し合った日々を覚えてるだろう?」

 名前は王妃だった頃、愛之介に毎夜、淫奔の限りを尽くされ、愛されていたのです。世継ぎを作るという名目でひたすら淫楽に耽り、まぐわっていたのです。快楽を教え込まされた女体が疼き、名前はとろとろと瞳が蕩けていくのでした。
 女帝として気高く、威厳ある雰囲気はもはや見る影もありません。娼婦よりも淫らに、雌犬よりも発情しきった様子で夫に甘えるのでした。

「あぁ、私の愛しい愛之介さま またあの時のように犯して、いっぱい愛してください

 語尾のすべてにハートマークが付いてしまっている名前の淫らな媚態を、愛之介はうっとりと眺めました。可愛らしい妻のおねだりに、淫欲がいやらしく膨れていきます。空いた片手で名前の尻を撫で、熱っぽく囁くのでした。

「とても可愛いよ、名前。ベッドに着いたら直ぐに愛して、たっぷり種付けしよう。世継ぎを孕んでもらうよ。」
「うれしい 愛之介さまに愛されるのが、今から楽しみです お世継ぎ、頑張ってつくります

 雪の国の麗しい王子、優秀で忠実な犬、淫らで愛らしい妻。愛之介が望み、欲したものはすべて掌中にありました。
 こうして悪虐皇帝として再臨した愛之介こと愛抱夢は、贅沢三昧にして酒池肉林の贅を極め、末代までその悪名を轟かせました。めでたし、めでたし。



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