!温いエロ注意




きっときっかけなんて単純だった。今じゃひたすら溺れていくだけだけど。

「あっ‥!っ‥んぅ、んっ」
いつからこういうことをするようになったんだったか。正確には覚えちゃいないが、確実なのはあの一年と関わるようになってからだと思う。
俺の下で喘ぐ神崎は正直言ってすごくエロくて可愛い。言っておくがこれはノロケなんかじゃない。こんなことしてても俺たちは別に付き合っているわけではない。かと言って単なるセフレというわけでもない。俺が一方的に神崎に好意を抱いている、自分で言って笑えてしまうが所謂片思いというやつで。
顔を合わせれば喧嘩するのは当たり前、あいつは毎回馬鹿の一つ覚えのように策という策も練らずに突っ込んできた。
暴れまくって力のごり押しでこっちにも安くはない被害を与えて帰ってく。結局勝負はつかずに、いつもそれの繰り返しだったのに。
(なんでこうなったんだっけ)
神崎に愛想というものは無い。むしろマイナスだと誰がどうみても100%そう答えるだろう。目つきの悪さに眉間の皺。俺も愛想が良い訳じゃないが、こいつほど壊滅的ではない。これは言い切れる。
だというのに、そんな神崎に惚れた俺はいよいよ脳味噌でももげたのだろうか。女は好きだ。それは変わらない。だが今や俺の脳内には神崎しかいなかった。
ぐちゅり、神崎に突っ込んでいた指を引き抜く。
神崎は「ぁッ、」と短く可愛い声をあげた。あれ、今当然のように可愛いって言っちまった、ああ笑えねぇ。
「‥大丈夫か?」
何が、と返されても困るがとりあえず声を掛ける。神崎はうっすらと涙で滲んだ目を俺に向けた。あ、これやばい。
「なぁ挿れるぞ」
一応言って浅く息をする神崎の返答を待たずに完全に勃ちあがった自分のそれを神崎の中にゆっくり挿れていく。ゆっくり、なんてところに自分の理性はまだ欠片でもあったのかと思う。
「ひぅっ、いぁっ‥ひめ、かわッ」神崎の中は相変わらず熱い。慣らしたと言えどやはり痛みはあるらしく神崎はしがみつくように俺の首に腕を回す。
素直だな、なんて見当違いな事を考えるが、神崎が力を抜いてくれなきゃ奥までいけない。きゅうきゅう締め付けられて俺にも余裕なんてない。
「神崎、息しろ‥大丈夫だ、力抜いて、」
自分でも気持ち悪いくらい優しい声がでた。神崎と目が合う。神崎は痛みに耐える為か切なそうに眉を寄せてひめかわ、と小さく俺を呼んだ。ああもうなにこの子ちょう可愛いんだけど。
「ん、いい子だ」
ぽふぽふと頭を撫でれば神崎からゆるりと力が抜ける。
ガキ扱いすんな、とこれまた小さな声で悪態をつかれたが、そういうところも可愛くて仕方がない。抱き締めたくなって神崎の首筋に顔をうずめてみた。するとくすぐったいのか身を捩りながらも俺の首に回していた腕に力を込めてきた。
(ちくしょう‥期待するぞ)
おまえもおんなじなのか、と。
セックスだけの関係なんて嫌だ。大切にしたい。優しくしたい。こいつが好きだ好きだ好きだ。
浮かんだ言葉を飲み込みゆっくりと律動を始める。
神崎の声が耳元からダイレクトに脳へ伝わってきて、正直今にも達きそうだったがまだだ、まだだ、と堪えた。
少しでも長く、こいつの中にいたいとか、
(変態かよ‥本当に笑えねぇ)
「、んッ‥ひめかわ、」
神崎に肩を押され首筋にうめていた顔をあげれば頬を両手で挟まれた。驚いて目を瞬かせると神崎は浅く呼吸をしながら困ったような顔で薄く笑う。
「ふッ‥おまえ、必死すぎ」
(ああ、なんだよちくしょう)
「‥必死になるに決まってんだろ」
好きなんだよ、好きなんだよ
たったそれだけの言葉をこんな行為に隠して。しかしどこかで伝わればいいと勝手なことを思う。
「はッ、おれも、必死だけどな」
神崎の首筋には汗が滲んでいる。俺は今の神崎の言葉を反響する。
(本当に、なんだよちくしょう、)
俺は少しだけ泣きそうになった。単純に、単純に嬉しかったのだ。


僕は繋ぎたい
(君と僕の何もかもが途切れませんように)



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