眠ろうか

春が終わったら起こしてくれ。
そう言って君は長い眠りについた。陽気な日差しと共に、あの陰気な出来事が去って行ったら教えておくれ、と言う。君の周りの人達が一人ずつ、消えていく度に君は殻を纏う。厚く、厚く何重にも纏った殻の重みに耐え切れなくなったのだろうか。君は長い眠りを選んだ。僕に、春の終わりを告げよと言う。春が終わったら、そっと耳元で囁こう。この星を喰ってしまおうか、と。星と、星と一緒に食べられた僕が、君の腹の中でドロドロに溶けて混ぜ合わさったら、この星の代わりに美しく静かで孤独な星を新たに産み落としておくれ。そうすれば君のその真っ直ぐな生き方も苦しくないだろう、なあ。
君の髪を撫でながら瓦礫の隙間から外を見た。濁った空には所々赤やオレンジが混じる。
ねえ、春の終わりはまだ遠いみたいだよ。だから僕も君の隣で春が来るまで眠るよ。ひとりの春を過ごし終わったら君を起こすよ。春が終わったら。


(110124)





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