リボルバー

枕元に置かれた灰皿に手が当たった。鈍い音と共にじんわりと手の甲に痛みが広がる。小さく舌打ちをすると、着替えていた土方と視線がぶつかった。
「…罰、かな」
土方がぼそりと低い声で呟いた。薄暗い部屋に彼の低い声はあまりに似合いすぎて跡形もなく溶けていく。
「大丈夫?って言うかと思った」
苦笑いと共に布団から上半身を起こした。手をひらひらと振ってみせた。
「何の罰で、俺は手をぶつけた訳?」
返ってくるであろう答は分かりきっていたが尋ねてみた。
「俺たちが抱き合って眠ること」
土方の表情は前髪の陰になって見えない。既にスカーフまで巻き終えた彼は下を向いたままで答えた。
「やっぱり世界の条理を逸してるから俺たちは悪かな」
立ち上がるのも面倒くさくてまた布団に寝転んだ。ねえ土方くん。男同士で生産性のないセックスして、朝まで一緒に過ごすっていうのはやっぱり悪だろうか。
「地獄に堕ちるかもな。無駄になった精子に呪われて」
土方が顔を上げた。少し髪に寝癖がついている。
「地獄でもいいけど、そこでまで土方と一緒は嫌だなあ」
笑いながら呟くと彼も笑った。
「俺だって嫌だよ」
じゃあ、と土方が部屋を出て行く。返事の代わりに布団を引っ被った。扉が開いて、閉まった。布団に残った彼の匂いにため息をついて顔を出す。灰皿に残された吸い殻を親指で潰す。
「天国だ地獄だ知らねえってんだ」


(110111)





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