マングース

彼が泣いている。彼の悲しい泣き声は世界と、僕の鼓膜を震わせた。ああ、君は何が悲しいんだい。いつか世界が消えてしまうことか、それともまだ当分は世界が消えないことか。
「ああ、ああ、どちらともであってどちらとも違うんだ」
彼は黒い髪を打ち乱しながら更に泣いた。ねえ、君が泣いたら世界は崩れ落ちてしまうよ。
「それはいやだよ、でも涙が出てくるんだ」
ああ、ああ、君の涙で僕の足が腐っていくよ。君を、世界は君を愛してるんだ。
彼は返事をしなかった。ただ、赤い唇を半分開けて嗚咽を漏らすだけだった。膝まで涙に浸かって見えなくなった僕の足はもう動かない。
「ねえ、僕は君が大好きだよ。君が居る世界が好きだよ。だから君が望むなら、君と一緒に僕は消えてもいいんだけど」
彼は涙でぐちゃぐちゃになった顔を僕の服に押し当てて言った。
「一緒にこの世界で生きたいんだよ」
僕は彼の涙に頭まで飲み込まれた。


(110207)





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