リップ

きっとそれは愚かしいことだ。今ここに残る者の気休めでしかないのだろう。誰もその世界の存在を信じていないくせに口を揃えて言う。「向こうでも大好きだったことして楽しんでてよ、後から行くから」それは羨みなんだろうか。煩わしい現実から逃れて自分を置いていってしまった者への憧れも含まれているのだろうか。いまさら綺麗事を言ったって伝わるなどと思ってはいないのに口をついて出る陳腐な弔いの言葉は自己満足以外の何物でもないではないか。いまさら言ったって意味がない。いまさら綺麗事を並べるのだってそれは周りの目を気にするからだろう。違う。何かが違うんだよ。全てが偽物の香がする。
「それでも」
土方に呟く。
「それでももしお前が死んだら、俺は向こうでお前に幸せに暮らしていて欲しいんだよ」
俺もだよ。土方が呟いて髪を撫でた。
「偽物でも、本物より大事なんだよ、きっと」






批判をしたい訳じゃない


(101217)





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