夢見るばくは

即死がいいと思う。死ぬときはだらだら苦痛が続くのは嫌だ。身体がどんどん動かなくなったり、息が苦しくなってもまだ生きているのは怖い。突然、何の前触れも無いまま死んでしまいたい。コンビニにジャンプを買いに行く途中や、トイレに座っている間に気づかないぐらい急になくなりたい。ああでもどうせなら、爆死がいいね。ポルノ映画を見ていたら客席に仕掛けられた爆弾が爆発して吹っ飛んじまうなんてのも笑える。画面に映る女を見ながらおさらばだ。滑稽でよろしい。あとは、情死とか?恋人と抱き合って毒を飲んで死ぬ?それこそ悪い冗談だ。笑えない。そんな格好悪いのはごめんだね。恋人に殺されたり、恋人の腕の中で死ぬなんてのは絶対に馬鹿げている。情死ぐらいなら腹上死がいいよ。好きな奴の上に乗っかって突っ込んでがっついて悲鳴あげさせて、突然相手を残して死んじまう。これは傑作だね。うん、これはいいよ。
「土方くん」
前を歩く彼の肩に顎を乗っけた。なんだ、と土方が低い声で答えた。
「土方くんはどれがいい?」
言い終えた途端土方が少し歩調を早めたものだから顎が肩から落ちてバランスを崩した。
「くだらねえよ、即死なんて」
細い目で見つめながら彼は返事をくれた。
「俺は、死なねえ」
きっぱり言い切った彼につかの間唖然としてから、笑いが込み上げる。土方くんはこれだから。
「それこそくだらねえよ、何だよその幻想」
腹を抱えて笑うと土方は不満げに鼻を鳴らした。死ななねえ。くだらないけれど、いい夢だ。土方の腰に手を回して、今度は逃げられないようにして肩に顎を置く。そのまま通りを歩く姿は随分滑稽であるだろう。目の前にある土方の形のいい耳に囁いてみた。
「なあ土方くん、俺はやっぱ即死がいいや」







夢見る獏は
夢見る爆破


(101212)





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