スプレンディドはぼろぼろ涙をこぼしながら、手元のチャームを握り締めた。本当だったらもっとちゃんとした物を用意してやりたかったのだけど、彼とは違いバイトと現役時代の貯金だけで遣り繰りしている俺にはこれが精一杯だった。
「…自分の誕生日ぐらい覚えておきなよ、」
青い髪を撫でると、スプレンディドは泣きながら笑った。泣いたり笑ったり死にたいと言ったり、彼もなかなか忙しい。
「…フリッピーく、これ、」
「ん?」
「つけて、いい?」
チャームには出っ張りがついていて、そこに紐なりチェーンなりを通す仕組みになっている。綺麗な紐は生憎持っていないけど、短めのチェーンならあったはずだ。一旦チャームを受け取りそこにチェーンを通す。
「じっとしてて、」
スプレンディドの首に腕を回しかちりと留めた。涙で潤んだ深い蒼の目が綺麗で、泣き腫らした瞼に触れるだけのキスをする。
どんなものかと身体を離し見てみると、チェーンが少し短かった所為で鎖骨の間あたりに銀色が光ってる。
これじゃペンダントと言うよりチョーカーだ。
今度もっと長いやつを用意してあげようとじっと凝視していると、彼は少しだけ顔を赤くして目を反らす。
「…似合ってない、かな」
あんまり長く見つめていたせいで誤解を生んだのか、照れたように笑いそう呟いた。とんでも無い、病的(と言うのは失礼だが)に白い肌に鈍い銀がよく映えていて、何というか、すごく艶っぽい。
勿論そんな変態じみた感想口に出来るはずも無く、「まさか、似合ってるよ」とだけ返した。金では無く銀にしておいて正解だった。
「誕生日おめでとう」
「…ありがとう、大事に、するから」
そう言ってまたぽろりと涙を溢したスプレンディドは、もしかしたら誰よりも弱いのかもしれない。普段だったらこんなに泣いてくれないし、甘えてもくれない。そう思うと、今この瞬間がとても貴重なものに感じられた。
肩を掴んで引き寄せた身体は華奢で、こんな腕で毎日毎日人助けをしているのだと改めて実感する。
今日だけ、せめて今日だけは、守ってあげたいと思った。




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