「これ、」
そう言ってフリッピー君が私に手渡したのは、小さな灰色の箱だった。これは何だろうと首を傾げてみせると、彼は小さく笑う。
「…やっぱり、忘れてたんだ」
「あの、これ、なに?」
「開けてみて」
目線で促され言われるままにリボンをほどく。上蓋を開けると、中には金属で出来たプレートのような物が入っていた。
恐る恐る指でつまみに掌に置いてみると、それはどんぐりの形(多分)をした銀色のチャームだった。小さな青い石と緑の石が並んで埋め込まれている。
「……っこれ、」
「…本当はもっとちゃんとした物渡したかったんだけど、」
震える指で裏面を確認すると、小さな小さな文字で何かが彫られていた。指でなぞりながら一文字ずつ読む。
『Happybirthday!』
すっかりかわいた筈の涙が、再び溢れて来る。どうして、どうして忘れてたんだろう。今日は、私の、
「っ……」
涙が、止まらない。苦しくなって俯いた。




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