「嫌になった時は、泣いたっていいし怒ったっていいから。」
「ごめ、ん」
「たまには俺の事も、頼ってよ。助けられてばっかりじゃ、不公平だろ」
ああこの人には、どれだけ感謝をしたって足りない。力強い声が耳に届く度に、愛しさが溢れた。
二人して一頻り声を上げて泣いた、良い大人がだ。
「っ本当はさ、君が怒ってくれて嬉しかったんだ、」
「…怒らない訳無いだろ」
「ごめ、んね、ごめん」
何度も謝る私の頭を、呆れたように溜息をつき撫でてくれた。今まで誰かが、私の為に悲しんでくれただろうか。声を張り上げ叱ってくれただろうか。救えなくて自暴自棄になったなんて誰にも言えないけれど、フリッピー君になら弱さをさらけ出せる。いつだって、救われていたのは私の方だ。
彼の首筋に顔を埋めると、シャンプーの良い香りが鼻腔を満たす。泣き疲れてふうと息を吐く。そう言えばそろそろ夕飯の時間かなあと時計を見た時、何かを思い出したようにフリッピー君が「あっ」と声をあげた。
「あのさ、スプレンディド」
「…ん?」
「渡したい物、あるんだ」
「え?」
彼は私から身体を離し、自身の腰に携えたポーチを探り始める。普段はナイフや手榴弾が入っているようなそこから、一体何を出すんだろう。大人しくその様を見ていると、どうやらお目当ての物は見つかったらしい。




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