図書委員長:薙沢律の場合ー10*



誰かの足音が明確にこちらに近づく。
中で繋がったまま律が上半身を弓弦に覆いかぶさるように近づけた。ぐじゅっと愛液が音を立てる。「っ…」と息を詰めたのと一緒に弓弦の緊張感も最高点まで上り詰めた。


「委員長、います…か…」


コトンっ、という最後の一足の音と一緒に発せられた声。


「取り込み中だから、後にして」


酷く冷たい声が弓弦の鼓膜を震わす。
先程弓弦が向けられていた優しくて甘い声とは比べ物にならないほど氷点下に達している冷酷さだった。


「っ〜〜〜〜、しっつれいしました!」


普段のおっとりとした物腰柔らかな律を知っているからこそ、向けられた冷たさに役員が身を強張らせ縮み上がる。
盛大に息を飲み込んだ不法侵入者は、その後慌てたように踵を返す音が律によって被せられたカーディガン越しにも手に取る様に分かった。
図書委員の役員が消え、気配が再び二人だけになったとき上から「はぁ…」というため息。それから視界が明るくなる。


「ごめん、でも押切とは分からなかったと思うから」


眉を下げて申し訳なさそうな顔をした男。
先程の恐ろしい声を出した人物とは到底思えない。


「いや、助かった…」


機転の利いた助けに感謝はすれど謝罪を受ける理由はない。


「動くよ」

「っ、…」


そうだ。
まだ繋がったままだった、と言われて気が付く。
既に弓弦の中で馴染んだ彼の半身が、ごりっと肉襞を抉る。
再び始まった快楽に弓弦の身体は自然と震えた。
きゅっと引き結んだ唇に唇が重なる。
そして弓弦は、当たり前のように口を半分開いて律の舌に舌を絡ませた。
唾液の混ざる音と肉同士のぶつかり合う音が、厳かな雰囲気の図書室で響く。
そこでは何とも言えぬ淫靡な時間がゆったりと流れていた。










「っ、んっン、…これ、やっ、ぁ」


壁際についた両手を覆う様に握られ、後ろから適確な場所を攻め立てられている弓弦が上ずった声で啼く。
前は壁、後ろは律の身体に挟まれてどこにも逃げ出せない。
男の太腿によって勝手に足が開かれて、重力と自身の重さで勝手に深いところまで突き刺さる。
ゆるいストロークなのに、快感の波はそれ以上のもので、既に顔はぐちゃぐちゃだ。
気持ち良すぎてどうにかなってしまいそう。


「な、ぎさっ、ぁ、ぁ、っ、ぁ」


頭が馬鹿になる。
勝手に口が舌を突き出したような格好を強いて、アへ顔を晒していた。


「ゃっ、ぁ、またイく、イクっ、から」


感情のまま告げれば、両の手を覆う手がぎゅっと更に弓弦の手を包み込む。


「ん」


優しいトーンの短い了承が鼓膜のすぐ近くで聞こえ、それと同時に声にならない悲鳴を上げて弓弦はぴんっと撓った弓の様に身体を張った。
射精はない。
もう既に何度も絶頂に達している弓弦は、数回前から射精もせずにイッていたが今回もそうだったらしい。すっかり雌イキを覚え込まされた身体は終わりのない快楽に翻弄されていた。
普段運動をあまりしないくせに、律の体力は底をつく気配がない。
この絶倫やっ、、、


「っ〜〜、ッ、、、まっ、て、今イったばっか」


ゆさゆさと身体を揺すられ、ハクハクと喉奥が大きく開閉を繰り返す。
しかし、そんな制止とは言えない言葉で終わる筈もない。
弓弦の逃げ場を奪った体勢で、律は後ろから容赦なく弓弦に快楽を埋め込む。
くったりと垂れた背中に覆いかぶさると、片手を離して可愛らしい胸の飾りへと移動させた。


「そこだっ…」


め!
という言葉が最後まで発せられることはない。
普段よりも数段高い甘い声が、美しいΩの口から紡ぎ出される。
上気した頬。
汗ばんだ肌。
耳に届く嬌声。
どこをとっても極上で、また一人のαを逃げられない監獄の奥へと繋ぎ止めてしまったのだった。




[ 116/134 ]

[*prev] [next#]

[しおりを挟む]


表紙へ






- ナノ -