図書委員長:薙沢律の場合ー9*





優しい啄みを受け、弓弦の思考はそこで考えることをやめたように一時停止した。
与えられる安心に身を任せる。
図書室という静かな空間に、小さく介入した睦言の音。
艶めかしいリップ音と二人の呼吸音が鼓膜を徐々に塞いでいく。目の前の男に注目が映り、誰かが入ってきてしまうかもしれないという心配はどこかへと消えた。
甘ったるい口づけを交わしながら、弓弦は律の首へと腕を回した。
さらに深くなったキスに翻弄されながら自らも舌を絡める。
拙い動きに律が合わせて、まるで恋人同士のようなキスだった。


「っ、は…ぁ…」


徐々に息が荒くなっていく。
頬が上気し、気分も気温も目の前の男の色香に充てられる。
ぷちん、ぷちん、とひとつずつ制服のボタンを外されていくのを知りながら、弓弦は知らないふりをした。


「っ…、…ふ」


開かれたYシャツの間から潜り込んだ手が素肌に触れ、声が漏れる。
身体を小さく揺らした弓弦に、律が控えめに笑った。
胸についた飾りを掠めた指。
ビクンっ、とさっきよりも身体が大きく反応する。
それでも弓弦は抵抗をすることなく優しいキスをくれる男との甘ったるい口づけを続けた。ぐにっと乳首を押しつぶされると尻穴がきゅっと窄まった。
何とも言えない寂しさが奥の方から広がる。


「ぁっ…」


彼の薄い唇が首筋に下りたとき、勝手に暑い吐息と一緒に声が零れ落ちた。


「っ、…ん」


弓弦の繊細で美しい肌をまるで傷つけない様に気を付けているみたいに、表面を滑る手は酷く優しい。律から与えられる愛撫に自然と口から声が漏れ始めた。










ぴんっと起った赤く熟れた乳首。
反り返った腰が律のストロークに合わせて揺れている。


「ァっ、…ぁっ、…」

「きもち?」

「んっ、…ふ、ぁ、きもちっ、ぃっ!」


素直に述べた弓弦に微笑んで「そ」と瞳を緩める。
顔が見える体位のお陰で、彼の甘ったるい表情はとてつもなく明瞭に窺えた。


「ッ…、ァ…」


きゅっと中が締まる。


「俺も気持ちいいよ」

「〜〜、っ、ん、ふ」


囁くような言葉に、ビクンっと腰が跳ねる。
薙沢律という男は色々と危ないと、良くないと、ぼんやりとだがそんなことが頭を過ぎる。


「かわ、い」

「かっ、わ、いくっな、ッ〜」

「可愛いよ」


否定を根本から包み込んでしまうような笑みにまた言葉が飲み込まれる。


「っ、ぁっ、〜、ん」


やっばい。もっ、イきそ
気持ち良すぎて吐精しかけたところで、律の動きが止まる。
それは意地悪をしたからとか、そういうのとはどこか違くて頭にはてなを浮かべる。
弓弦の不思議がっている雰囲気が伝わったのか、一瞬険しい顔を浮かべた男が視線を戻してにこりと安心させるように笑った。


「なんでもないよ」


弓弦の髪を撫でる手は、まるで大丈夫と言っているみたいでやはり弓弦は「?」と首を傾げた。
にこっと極めつけに笑った男は、おもむろに横においてあったカーディガンを掴み弓弦の顔面に被せる。


「なに」


外そうしたところで、ぐっと上から抑えつけられて視界を遮られる。
その後に普通に律動が再開され、抵抗している暇を物理的に奪われた。


「ぁ、んっ、ぁ、やっ、なぎっ、さわ」


抵抗できなくされると途端に怖さが増す。
Ωでは勝てないαの力に、屈服させられているような気がしてしまう。
やだっ、と拒否を言いかけたところで第三者の足音が弓弦の耳に入って来た。
身体が反射的に固まる。


「いいから、そのまましてて」


ぼそっと小さく呟かれ腰を緩く振られる。


「んっ、ふ…」


誰かが来るというヒリツく空気感と快感に、感覚がさらに鋭く尖る。
声を抑えようと思うのに気持ちいい場所に当たるから噛んだ唇からくぐもった声が漏れた。



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