題名のない部屋
高尾と深夜の駄弁り
深夜の私の部屋。
いつもなら私が一人でいるのが当たり前なはずなのに、今日はなぜか和がいる。和、つまり高尾和成だ。
10時頃にいきなりやってきて、仕方ないので家に上げた。和は私の母親と(知らない内に)めちゃくちゃ仲良くなっているため、男のくせに警戒されていない。まあ、私も警戒はしてないけれど。

「真ちゃんとカラオケ行ってきた!」

針が12時を回った時、私は昨日のことを思い出す。そうだ、これを報告するつもりだったんだ。その言葉に和ががたりと立ち上がった。

「真ちゃんとカラオケ!?マジかよ、俺だって行ったことねーのに!!」
「い、い、で、しょー」

私のドヤ顔に和は悔しそうに唇を尖らせる。
とりあえずこれで秀徳レギュラーみんなとはカラオケに行ったことになるけれど、真ちゃんは難関だった。カラオケに誘いはじめて行くまで半年ってなんなの。
それに比べて和と宮地さんは簡単だったなぁ。
和はそもそもカラオケ好きだし、宮地さんは私が「宮地さんの好きなアイドルの歌全部歌えますよ」って話したら即決してくれた。
宮地さんのオタ芸は録画済みだ。試験前に見るととても元気が貰える。

「真ちゃんヤバイよ。意外と流行りの歌とか歌えるんだよ」
「マジで……めっちゃ見たい……」
「しかも上手い」
「上手いの!!??」
「意外でしょ!?」
「超意外!!!」

実は、和と二人で真ちゃんは歌が得意ではない という見解が一致していたのだ。

しかしいざ聴いてみたら驚き。
確かに前々からいい声だとは思っていたけど、それで下手というギャップを望んでいたのに、上手かったということがむしろギャップだ。
高音も低音も見事なほど歌いわけて、途中聞き惚れてしまった。あれはずるい。
緑間真太郎に性格以外の弱点はないのだろうか。人付き合い以外の苦手はないのだろうか。

「いいなぁ、俺も真ちゃんとカラオケいきてーよー」
「今度みんなでいく?」
「みんなって?」
「黄瀬くん、火神くん、テツくん」
「ぶっ!! っ、まさかで吹いたわ!」
「いやぁ、真ちゃん嫌がるかなって」
「嫌がるだろ!」

と、いうわりに和の声は小刻みに震えていて、面白がっているのはよく分かる。つまりやれってことか。

「じゃあ三人には連絡して予定開けといてもらうね。真ちゃんにはもう一回二人で行きたいって誘ってみる!」
「最低かよ!」
「否めない!!」

イエーイ とハイタッチを交わす。もう深夜も深夜なのに、楽しい会話は止まらない。明日の朝が辛いのは分かるのに、まるで時間を見ないふりしているように喋り続けた。


「遅刻なんていい度胸だなぁ?轢くぞ、あぁ?」
「年端もいかない男子が、女子の家に泊まるのは感心しないな」

もちろん遅刻して宮地さんにしごかれたし、なぜか和が家に泊まっていったことを大坪さんに怒られた。秀徳の父と母だ。

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