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獄寺くんが転入してきた次の日、理科のテストが返ってきたのだが………。

「73点……」

まぁ、普通に平均より上を取ることが出来て一安心。
理科担当の根津先生は自分の学歴を盾に、勉強ができない生徒をいじめるのだ。
私はどうしてもそれを避けたくてそれなりに勉強はしている。

そして今回もそんな根津先生の嫌みを受けたのはツナだ。流石ダメツナ。クラスで唯一20点台をだしたらしい。ちなみに山本は38点だった。

しかし今回は勝手が違った。
ツナの手元にテストが渡ったすぐ後に獄寺くんが登校してきたのだ。
なんて堂々たる遅刻なのだろう。

遅れてやってきた獄寺くんはツナの部下らしく真っ先に彼に挨拶をし、クラス中を沸かせ、さらに根津先生に目をつけられてしまった。
根津先生は獄寺くんを落ちこぼれとつるむのは落ちこぼれだと侮辱したのだが…。それが彼の怒りを買ったのだろう。

「10代目沢田さんへの侮辱はゆるさねえ!!!」

獄寺くんは根津先生の襟首を締め上げ、そう怒鳴り付けたのだ。あの目はまさにマフィアのそれだった(ドラマとか映画とかしか知らないけれど)。

もちろん二人は校長室に連れていかれました。

とりあえず…無事であることは祈っておいてあげる。私の中学生活最大のスパイスツナと、目の保養獄寺くんよ。

「浜内ー!」
「山本」

他人事の様に手を擦り合わせていると山本が声をかけてきた。

「お前なにしてんだ?」
「お祈り。ツナと獄寺くんの無事を願ってるの」

山本はふーんと呟きながら私の前の席に座る。そこの席の男子は友達の席まで遊びに行っているようだ。

「お前二人と仲良かったっけ?」
「昨日ね」

結局昨日はリボーンに流され、ツナと獄寺くんに自己紹介をしてもらったし、自己紹介をした。
ツナにはすごく心配されたけれど、獄寺くんは「リボーンさんの見込まれた方なら」と、なぜか仲間認定をされてちょっと困っている。もしファミリーに入ったとしても、彼みたいな尽くしっぷりは真似できないししたくない。まぁ、入らないけれど。

「……ねぇ、山本は今日の帰り暇?」

知らぬうちにそんなことを口走っていた。面白いとか口ではいいながら、非日常的なことに怯えているのかもしれない。今のところ、私にとっての日常は山本だ。

「今日か?今日も部活が−−」

そっか、山本には部活があったんだと諦めようとした瞬間、グラウンドから爆音が聞こえた。
この音、聞いたことがあるというか、忘れたくても忘れれない音……。

まさかと思い教室の窓際に走り寄ると、案の定グラウンドが爆発していた。もちろん、獄寺くんのダイナマイトによって。

なんで獄寺くんがダイナマイトでグラウンドを爆発させてるかは分からないんだけど……分かるよ、ツナのためなのは。

「うわぁ……こりゃあ部活は無理だな…」

後ろをついてきた山本はそう言いながら頬を掻く。確かに、グラウンドは穴だらけで、野球なんてしている場合じゃないだろう。

と、いうことは……。

「え、じゃあ…」

恐る恐る山本を見上げると、目が合う。彼はにかっと歯を見せて笑った。

「一緒に帰るか!」
「……!! うん!」

ありがとう獄寺くん。私の非日常代表。
お陰さまで私は日常代表の山本と一緒に帰ることができます。

はじめて山本と一緒に帰るわけだけど、流石にここまでしたら彼のことを「友達」だって言っても許されるよね?

今までは楽しいことを見る専だったから、友達を余り作らなかったけれど、山本となら、楽しいこともしたいと思える。彼の人望のなせる技だよね。

私の心情が変わったのは、山本と関わったからか。はたまた、あの殺し屋な赤ん坊に出会ったからなのか。それは分からないけれど、とりあえず、今日の下校が今から心底楽しみです。