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今日もダメツナはダメツナだなぁ。

テストは赤点。スポーツに関してはダメツナがいるチームはいつも負け。

頭が悪くて運動音痴。
ほんとネタに事欠かないやつ。

沢田綱吉。
私は面白くて嫌いじゃない。客観的に見ている限りは最高のやつだ。
巻き込まれたくはないけれど。

あいつと同じクラスになり、席が離れたことがこの中学校生活最初のラッキーだろう。

6月の中頃私は騒がしい学校内にいた。
いつも以上に騒がしいけれど、何かあったのかな。まだクラスに友達がいないから私には余り情報が入ってこないのだ。
笹川さんがなんか…とか言ってたような気がするけれど。

なんだろう。
教室内にいるやつらが次々と外に飛び出していく。もうすぐ始業なのに。
何か面白いことかな?
私は手にしていた本を置き、席を立つ。
面白いことなら大賛成。興味あるし、私も行ってみよう。

「浜内!」
「あ、山本」

私に声をかけてきたのはクラスメイトの山本。
彼とは小学校で何回かクラスが同じになったことがあるから、それなりに話せる。あとは山本の性格的に、よく話しかけてくれるのだ。
天然の癖に気配りの利くやつで好感を持てる。
一年で野球部のレギュラーで、運動神経抜群。おまけに顔も良いと来ればモテるのも頷ける。

「お前も道場いくのか?」
「道場?みんな道場に向かってるの?」
「おお!ツナと持田先輩が戦うらしーぜ!」

なんと!それは初耳だ。
そして、とても面白そう!
なんでそうなったか、経緯は知らないけれど、そんなことは後回しだ。

「いくいく!」
「んじゃ一緒に行くか!」
「うん!」

駆け出す山本について、私も走り出す。B組にもC組にも誰もいない。みんな道場に行ったのかな? そりゃあダメツナVS持田先輩なんて面白いもの、見なきゃ損だもんね!
私もワクワクしてきた!


「ここだ!」

山本と駆け付けた道場は騒然としていた。しかし人混みのせいで肝心の中が見えない。
なんとか背伸びしてみるが、そんなに身長がない私ではやるだけ無駄だった。

「や、山本!見える!?」

一年では長身に分類される山本に問いかけるが、彼も見えないらしい。

これは仕方ない。私は未だに爪先立ちをする山本の袖を引っ張る。

「ん?どうしたんだ?」
「山本、肩車して!」

私のお願いに山本は口角を上げた。「肩車な!」そう言って彼はその場にしゃがみこむ。流石に肩車をすれば見えるはず、と私は彼の肩に足をかけた。

「山本、立てる?」
「ん?乗ったか?」
「うん、大丈夫」
「んじゃ立つぞ!」

山本はその言葉と同時に、なんてことないように立ち上がった。 中学生なんて重いと思うのに、山本すごい…。ぐらつきもせずに、真っ直ぐ立ち上がってしまった。

そしてそれなりに高い。

私は山本の頭をしっかり掴み、前を見る。たくさんの人の頭が見えた。

みんなが囲む中心、そこだけが閑散としている。

「いた!」
「お!」

ツナと持田先輩だ。
距離があってちゃんとは見えないけれど……。

ツナ……裸じゃない?

えっと。どういうことだろう。
裸のツナが持田先輩を組強いてるの?
というか、持田先輩の髪の毛がなくなってるんだけど、あの人別にスキンヘッドじゃないよね?

「なぁ、浜内、どうなってんだ?」
「ええ……っと………。裸の、ツナが持田先輩を組強いて……持田先輩がスキンヘッドで……?」
「は…?」

そんな疑問符を浮かべられても困る。私だって何がなんだか分かっていないのだ。
でも、なんとなくこれだけは分かった。

「ツナが、勝ってるんだと思う…」

裸のツナは何かを審判に差し出した。審判はそれを見て赤旗をあげる。
瞬間道場に集まった全生徒がわいた。

「スゲェ!!勝ちやがった!」

それは、ダメツナと呼ばれる彼が中学入学以来初めて「ダメ」ではなかった瞬間だった。