015




リボーンにマフィアの話を聞いた山本はいつもと変わらない乗りで「ボンゴレファミリーに入れてくれ」なんて言い出した。山本は「ごっこ遊び」と勘違いしていたみたい。というかリボーンは「山本はファミリーの一員」だなんて言っていたくせに山本自身の承諾は得てなかったなんて。横暴だ。

と、いうことで突然始まったのは山本の「入ファミリー試験」。山本をファミリーとして認めたがらない獄寺くんを納得させるために行うらしいけれど、不合格は死を意味するらしく、つまりそれは…合格しなくちゃダメということ。でも合格したら山本はマフィアになってしまうし……だからって死ぬなんて許せないし…。
どっちも最悪だ。

朝に「もう死ぬような無茶はしない」って約束したばかりなのに。例え山本は死ぬと思ってないとしても許せない。

私が花壇の縁に腰を下ろしてブスくれていると隣に座っている獄寺くんが「おい」と声をかけてきた。「なによ」とそちらを見ると、煙草をくわえたイケメン不良がこちらを睨み付けている。くそぉ……イケメンだよねぇ獄寺くん。睨まれてちょっと怖いけれどやっぱり目の保養になる。

「お前、山本とはどういう関係だ?」
「は?いや……どうって……」

私はリボーンの攻撃を避け続ける山本をちらりと見る。流石の運動神経でリボーンが放つナイフを避けている。「いい肩してらー」とリボーンの肩を誉めるほどの余裕はあるらしい。獄寺くんは面白くなさそうだ。

「うーん…小学校の同級生。友達だよ」
「あいつ昔からあんな無礼なやつなのかよ」
「無礼って」
「あいつ、10代目をバンバン叩きやがって…」

獄寺くんが吸う煙草の減りが早い。イライラが増してる証拠だろう。やっぱりカルシウムをとるべきだ。

「バンバン叩く……ね」

それは山本なりのスキンシップなんだけど、獄寺くんには無礼な行為に見えるんだろう。それを上手く説明する自信がない。スキンシップって言っても食い下がられる気がする。

「お、見えなくなった。いくぞ浜内」

確かに三人が見えなくなってしまった。獄寺くんが立ち上がり歩き出すのに続き、私も三人を追うことにする。

徐々にリボーンたちが見えてきた。あれ?リボーンの持っている武器がナイフからボウガンに変わっている。なんで殺す気なの。そりゃあ不合格は死ぬことになるよ。

例え野球で鍛えている山本と言えども彼は一般人だ。こんなの間違ってる。
止めに入りたいけど怪我はしたくない。
勇気が無くて飛び出せずに足踏みしていると、聞き覚えのある笑い声がした。まさかと思い聞こえた方に視線を上げると、外付け階段に小さな人影が見える。

「リボーン見ーっけ!!」

山本は何だ?と首を傾げているが、ツナは顔を青白くしている。きっと私も青くなっているだろう。だって彼にはめんどくさい記憶しかない。

「オレっちはボヴィーノファミリーのランボだよ!!5歳なのに中学校に来ちゃったランボだよ!!」
「うざいのでたーっ!!」

大声で突っ込むツナに気分をよくしたのかランボは楽しそうに笑っている。獄寺くんは「どーします?」とリボーンに指示をあおいでる模様。

「続行」

リボーンは相変わらずランボを無視してボウガンを放つ。やばいと思い見上げるとランボの目に涙が浮かんでいた。
縁に身を乗り出していたランボは踊り場に身体を隠し、何かを取り出しているようだ。それが武器なのは確実。

「パンパカパ〜ン♪ミサイルランチャ〜ッ!!」
「み、ミサイルランチャー!?」

リボーンを殺すために用意した武器なんだろうけれど、あんなの撃たれたら流れ弾が山本に当たってしまうかもしれない。
二人はリボーンの攻撃に集中している。ランボを止められるのは私ぐらいだ。

「ラ、ランボ待って!」

私は外付け階段をかけ上がる。
しかし、時既に遅し。ランボは引き金を引き、ミサイルは放たれてしまった。

「うわぁああ!!」

ダイナマイトとは比べ物にならない爆発、爆風に座り込んでしまう。煙が晴れると、無傷の山本とツナが見えた。大丈夫、当たってない。
私は恐怖で砕けてしまった足腰に力を入れて立ち上がる。ランボを止めなきゃ。たったちょっとだけのはずの階段が長い。

また爆音。確認のために外を見るとまた怪我は無いようだが、リボーンの武器がサブマシンガンに変わっている。
更にそこに獄寺くんまで加わるらしい、彼がダイナマイトを取り出している。

「いや、いや……!!待ってよ!待って!!」

震える足を叱り、階段を上る。
せめて一番死の危険があるミサイルランチャーだけでも。止めなきゃ。止めたい。

友達のために。
山本のために。

階段を登り終えるとそこにはなぜか10年後のランボが立っている。ミサイルランチャーを持っていることからするとリボーンを殺すつもりはあるらしい。

「サンダーセット!」

ランボの言葉が豪雷を呼ぶ。目の前がちかりと輝いた。
あれは、100万ボルトの……!!
リボーンはなんでもないようにいなしていたけれど、山本やツナにはそんな簡単にいなせるとは思えない。

「待って、ランボ!!」
「っ、胡桃子さん!?」

止めなきゃ。
頭はそれでいっぱいだった。